絶対王者ジョコビッチに怪優小日向文世……その規格外の生き様を見よ

生島 淳 プロフィール

そして最後は書き手のスターぞろいのアンソロジー。雑誌『ニューヨーカー』の名品を集めた『ベスト・ストーリーズ』が早川書房から刊行され、'60年代から'80年代の作品が収められた第2巻『蛇の靴』が刊行された。

正直なところ、第1巻は昔の作品が多く、買う踏ん切りがつかなかったのだが、第2巻にはアメリカの映画批評家で最も影響力があったポーリーン・ケール女史と、最高のベースボールライター(文芸編集者でもある)、ロジャー・エンジェルの作品が収録されているではないか! 即買いです。

ケール女史は一時期日本でも翻訳が出ていたが、私は小林信彦とケール女史に映画の見方を学んだ。

本書には『俺たちに明日はない』(もう、およそ50年前の作品なんだね)の批評が収められており、「ニューシネマ」の走りと呼ばれたこの作品は、公開当時、アメリカで評判が悪く、それに怒って筆を執ったという。

感情がほとばしり、文章に熱があって、今読んでも刺激がある。この批評がきっかけでケール女史は翌'68年から『ニューヨーカー』のレギュラー批評家となるのだから、人生は分からない。

私にとって、エンジェルは神に等しい存在だが(15年前には『ニューヨーカー』の編集部を訪れた。今も95歳で存命)、'81年の大学野球を題材としたこの小品にも、彼の家族にとって野球がどんな意味を持っていたか触れた部分があり、「野球と人生」のつながりが、生活に彩を与えるものであるか、表現されている。

トランプの台頭でワケの分からない国になってきたが、まだアメリカに良心はありますぞ。

『週刊現代』2016年7月2日号より