絶対王者ジョコビッチに怪優小日向文世……その規格外の生き様を見よ

生島 淳 プロフィール

日本に転じて、役者、文楽の人形遣い、落語家などの人生、舞台遍歴をまとめた関容子さんの『客席から見染めたひと』は、読み応えがある。

名役者たちの味わいの源泉

関さんの本は、独特の味わいがある。役者の芸談というわけではなく、関さん個人の観劇体験から「ヒューマン・インタレスト」へと展開していき、役者の実像が浮かび上がってくる。

私にとって特に興味深かったのは小日向文世と中村扇雀だ(坂田藤十郎と扇千景の二男)。

小日向文世は北海道出身で、上京してデザイナーの学校に通っていたが、骨折してなぜか役者を志す。それからは、文学座の試験に落ちたりしたり、中村雅俊の付き人などを経験し、串田和美、吉田日出子がいる自由劇場へ入所する。入所試験で課題をこなすエピソードはあまりにも哀しくおかしいが、最後に余韻がある。

なんだ、この頃から小日向文世の味わいは変わっていないんだな、と思わず膝を打った。

そして歌舞伎の扇雀で驚いたのは、立役への野望がハッキリと書かれていることだ。扇雀といえば、女形として中村勘三郎の相手を幾度も勤め、独特の色気があるし、安心感がある。

一方でこれまでも立役としても活躍し、芸域が広いのだが、やってみたい役が『俊寛』の俊寛僧都や、『仮名手本忠臣蔵』の大星由良之助と聞くと、様相が違ってくる。

「主役やるなら立役をめざさないと」と言い切る扇雀の今後の展開が俄然気になってきた。

もうひとつ。麻実れいの話があり(この本の中では紅一点)、宝塚音楽学校入学式当日の写真を見ると、まさに「美少女」で度肝を抜かれました。