イギリス「EU離脱」問題、一発の“凶弾”は歴史の針路を変えるか? 国民投票直前レポート

女性国会議員殺害事件のインパクト
笠原 敏彦 プロフィール

同紙は各社が行った直近7つの世論調査の結果の平均値を定期的に公表している。最新の結果は、離脱支持(48%)が残留支持(43%)--合計が100%でないのは恐らく小数点以下の扱いの問題--を5ポイントも上回っていたのだ。

個別の世論調査では離脱支持が残留支持を大きく上回るものも出ているが、イギリスの場合、個別の世論調査の信頼性はそれほど高くない。手軽なオンライン調査が普及していることなどがその要因だとされる。

その中でFTの平均値は参考となる。残留支持者よりも離脱支持者の方が実際に投票する率はかなり高いと予測されてもいる。

殺害事件が起きなかったら、結果はEU離脱となっていたのではないか。筆者は、保守的なイギリス人は実際の投票になれば現実主義的な判断を下し、残留の結果が出るだろうと考えていただけに、その流れは驚きだった。

テレビ討論でのキャメロン首相の主張に対する低い評価などを見ても、確かに、離脱派の方に勢いがあった。

残留派が主張する離脱した場合の経済的損失。「GDP(国内総生産)は2年間で3.6%減少する」「2年で50万人が職を失う」「生活水準は10%下がる」「所得税増税は避けられない」。こうした主張には、「脅し戦術」として反発する有権者が少なくなかった。

世界銀行や国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)などが次々とマクロ経済的な試算から離脱に伴う経済的損失を公表しても、それに抗するかのように離脱派に勢いが生まれる現象をどう捉えたらいいのか。「仮想の危機」を訴えるのは、エスタブリシュメント側だ。

アメリカでのトランプ現象とも通底し、イギリスで起きていることは反エスタブリシュメントの「革命」と呼んでもいいほどのムーブメントなのではないか。

キャメロン首相の「大誤算」

保守系テレグラフ紙に載った有権者の声が的を射ている。

“離脱がそれほど重大な結果を生むなら、キャメロン首相はそもそもなぜ国民投票なんかやるのか”

“有権者はバカではない。離脱に伴うリスクは理解している。しかし、我々は脅されて残留に投票したりはしない”