「超円高」「日経平均14000円」回避のために、黒田日銀が用意する「バズーカ」フルコース

発射のタイミングはいつ?
小野 展克 プロフィール

英のEU離脱が日本経済に与える深刻な影響

英国がEUから離脱した場合、英国はEU各国との市場アクセスについて経済連携協定(EPA)の締結を目指した交渉を始めることになる。ただ、グローバル化に敏感な英国の国内世論を背景に交渉の長期化は避けられず、投資家が嫌う不確実性は当面の間、払拭できないだろう。

特に、英国の主力産業である金融業へのマイナス効果は大きい。EUでは加盟国のいずれか一国で金融業の事業免許を取得すれば、域内どこでも金融サービスを提供することが可能だ。英国がEUを離脱すれば、英国で事業免許を取得している金融機関は、他国に拠点を設置するなどして事業免許の再取得を迫られることになり、欧州の金融界は大きく混乱することになるだろう。

英国の成長率も大きく下振れする。外資系金融機関によると標準シナリオに比べて、今後3年間累計で4%もマイナスになるとの推計も出ている。

こうした英国やEU経済への下押し圧力がグローバル経済に与えるマイナスインパクトに、1ドル=100円を突破する円高がもたらす企業収益へのダメージが加わると、日経平均株価は14000円という下値を試す水準まで崩れるリスクを孕んでいる。

直近では、英国のEU離脱懸念はやや後退しているが、追加緩和が見送られた16日の時点では、世論調査の結果は拮抗、専門家の間でも「30%~40%程度は離脱の可能性がある」との指摘が出ていた。悪夢のシナリオが実現する可能性がこれだけ大きかったことを考えると「英国のEU離脱が実現した場合に備えて、予防的な追加緩和を実施されると考えていた」(メガバンク幹部)という金融関係者も多かった。

しかし、黒田は動かなかった。

日銀が政策変更を実施するのは、日銀が経済や物価情勢の見通しを示す「展望リポート」が示される1月、4月、7月、10月の場合が多い。経済や物価情勢の見通しの変更と金融政策の変更をセットにする方が、つじつまが合いやすいからだ。

7月10日の参院選直前の政策変更は、政府・与党との関連をつつかれやすい。特に民進党が選挙公約で「マイナス金利の撤回」を掲げるなど日銀の政策変更が、政治的な争点になりかねない情勢だ。

そこで黒田は国内外の政治・経済情勢を慎重に見極める安全策を採用したと考えられそうだ。