「旧軍人・軍属には50兆円」「民間人にはゼロ」戦後補償の差を示す、あまりに残酷な数字

戦争受忍論をご存じですか?
栗原 俊雄 プロフィール

旧軍人には累計50兆円、民間人にはゼロ

もう一つ、この受忍論には決定的な瑕疵がある。日本国政府は、1952年に独立を回復するや、「戦傷病者戦没者遺族等援護法」を成立させた。さらに翌年、敗戦後GHQによって停止させられた軍人恩給を復活させた。

「え?受忍論で、みんな我慢しなきゃいけないんじゃないの?」と思った人は、まともな思考の人だ。1952年以降、旧軍人軍属や遺族らに対する補償、援護は累計で50兆円を超える。一方、民間人にはゼロである。

読者の中には、知人に空襲などで障害を負い障害者年金を受けている人だろうか。ここでは仮にAさんしよう。そして、空襲で足の大腿部から下を失ったとしよう。Aさんは「障害者等級二級」である。障害年金は年金で80万円ほど。

「民間人だって補償されているじゃないか」と思うなかれ。Aさんは、障害者であれば戦争被害者でなくても受ける年金を受けているに過ぎないのだ。つまり、米軍の戦略爆撃機B29の落とした爆弾で片足を失った人と、よっぱらい運転で自損事故を起こし、片足を失った人とは同じ扱いとなる。

一方、軍人がAさんと同じように爆弾で片足をうなった場合、軍人であるがゆえの加算がなされる。軍歴12年以上の軍人(Bさん)の場合、軍人恩給=113万2700円+392万7000円(増加恩給・けがによるもの)=合計505万9700円を受けとる。同じ程度のけがでありながら、AとBが受ける年金はたった一年で430万円近くもの差が生じるのだ。

これは仮定の話ではない。後述する大阪大空襲の被害者原告団が、大阪高裁に提出した事案である。