台湾から輸入したトラックをフル改造……現代美術家やなぎみわが「移動舞台車」で目指す“表現”の地平

はたしてこれは「演劇」なのか?
寺田 悠馬 プロフィール
横浜でいったい何が起こるのか〔PHOTO〕やなぎみわ

「演劇ではなく、一つの装置になればいい」

「演出家」、「舞台化」、「プロデュース」、そして「演劇」。一見当たり障りのない言葉の数々が、やなぎみわの『日輪の翼』に照らすと、無闇には使えなくなってしまう。

言葉は、経済活動に流動性をもたらす通貨のように、我々の間に流通し、あらゆる情報の伝達を媒介してくれる。しかし、やがて一物一価の原則に収束する経済活動とは異なり、言葉とそれが指す情報の間には、つねに乖離が存在し続ける。

そして言葉の流動性が増すと、その遠心力に耐えられなくなったかのように、言葉はいつしか情報から分離してしまい、空虚な記号となって、社会に氾濫することがある。我々は、そんな不完全な性質を理解した上で、言葉と付き合っていくしかないだろう。

それでも、このプレビュー記事を締めくくるにあたって、6月末に横浜で行われる「イベント」を表す言葉を、やなぎと重ねてきた会話の中からあえて選ぶとしたら、それは「装置」ということになる。

「『日輪の翼』は、演劇ではなくて、一つの装置になればいい」とやなぎは言う。

装置、すなわち、「それ」があることによって、「何か」が起こるものである。やなぎの作品があることによって、横浜でいったい何が起こるのか。そんなことは心配せずに、やなぎみわが創り出す2時間15分にこの身を託すのは、至極の贅沢となるはずだ。

【公演詳細・チケット情報はこちら】

神奈川芸術劇場(KAAT)ホームページ ⇒http://www.kaat.jp/d/yanagi_nichirin
2016年06月24日(金)~26日(日) 横浜公演 / 8月6日(土) 新宮公演 / 8月27日(土)~28日(日)  高松公演 / 9月2日(金)~4日(日) 大阪公演
※地方公演についての詳細は、やなぎみわステージトレーラープロジェクト(HIWOOD内:03-3320-7217)にお問合せください。

参考文献)
山内宏泰著『彼女たち Female Photographers Now』
日本文化デザインフォーラム主催「第14回ことばラボ」 やなぎみわ 移動公演「日輪の翼」を語る
『舞台芸術』19 京都からの発信 アートマネジメントの現在地から
『kotoba(コトバ)』第22号
『瓜生通信』62号 特集:やなぎみわの翼
 

寺田悠馬 (てらだ・ゆうま)
1982年東京生まれ。株式会社コルク取締役副社長。投資銀行、ヘッジファンドにて国内外勤務を経て現職。コロンビア大学卒。著書に『東京ユートピア 日本人の孤独な楽園』(2012年)がある。Twitter: @yumaterada

著者:寺田悠馬
東京ユートピア 日本人の孤独な楽園
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