参院選の争点から消えた「原発問題」〜たった5年で大事故は“なかったこと”に…

あの恐怖を忘れたのか
古賀 茂明 プロフィール

安倍政権の戦術も巧妙だ。原発に関する重要な決定は、静かに目立たない形で行う。例えば、廃炉必至と見られた高速増殖炉「もんじゅ」の存続を事実上決めた文科省の検討会の報告書発表は、当初の予定の5月20日から突然、27日に延期された。オバマ大統領の広島訪問にぶつけるためだろう。これで、「もんじゅ」はニュースから消えた。

次に解決策がないといわれる福島第一原発の汚染水問題。トリチウム汚染水を除染しないまま薄めて海に流してしまうという驚きの方針を提案した経産省の作業部会報告も、同じ27日で、ほとんど報道されなかった。

また、本来は廃炉にすべき古い原発、高浜1・2号機の40年超の運転延長の審査も同時期に終わった。さらには、事故が起きたときの電力会社の賠償責任を国が肩代わりするという究極の原発支援策も、制度設計の議論が開始されている。どれも、国民はほとんど知らないままだ。

頼みの野党第一党の民進党は、参院選が近づくにつれて連合支配が強まり、原発を争点から外そうとしている。

福島原発事故を受けて原発の延命を止めたドイツの環境相は、「原子力は最も割高。国の補助金なしには建設不可能で財務上最悪」と切って捨て、「今や再生エネは電力消費の3分の1を賄い、原子力の2倍だ」と脱原発・自然エネルギー推進を柱とする成長戦略に自信を示す。

一方、事故から5年が経った日本の成果はほぼゼロ。

それどころか、原発について考えることさえ放棄しようとしている。こんな状況は、誰がどう見てもおかしい。

もう一度、「原発」を選挙の争点にするべきではないか。

『週刊現代』2016年6月25日号より