マル暴刑事が起こした警察史上最大級の不祥事!映画『日本で一番悪い奴ら』白石和彌監督インタビュー

泥沼でも豊かに生きる一瞬はある

―そうした役者さんたちの演技について、監督はどんなことを要求しましたか。

彼らがやっていることは常軌を逸しているわけで、一歩間違うとコントになってしまう。だからその一瞬一瞬は常に必死、まじめにやってほしいというようなことは言いました。

必死にやったさまが滑稽に見えて、結果的にコメディーに映ってしまうことはかまわない。でも、ハナから「我々はコメディー演じてますよ、おかしいでしょ」って芝居はやめようと。たとえば、「チャカとシャブ、どっちが大事なんですか」とか「拳銃十丁くらい一気にいけねぇか」といった台詞があるんですが、こんな会話はおかしいわけですよ(笑)。

でもそれを当事者は本気で悩んで考えていたわけで、芝居にもその気持ちを反映させるべきだと思いました。

―この作品の制作過程で、印象深かったこと、あるいはシーンはありますか。

何でもないシーンなんですけど、飲み屋で諸星と(DJの)太郎が「お前何をやってんだよ」「いやぁ、僕クスリの運び屋やっててDJやってたんスよ」みたいな会話をするんです。それで太郎が立ち上がって「僕、諸星さんと一緒ならビッグになれる気がするんスよ」って言うんだけど、あのシーンを撮ってるとき「自分が撮りたいと思ってきた映画って、こういう映画なんだ」と思えたんです。

諸星はファミリーのような絆を築くSたちや女たちと出会います。彼の悪の半生に関わる全員と出会うんだけれども、もれなく全員と別れていくんですよね。別にそうしようと意識したわけじゃないけど、撮ってみたらそうなった。それって人生そのものですよね。

人生の豊かさの定義は人によってそれぞれだけど、僕は人が誰かと出会うということ自体がすごく豊かなことだと、諸星と太郎のシーンを撮っていて感じました。あの瞬間は2人とも出会いをすごく喜んで、キラキラしている。それがとても豊かだと感じたんです。だからたとえ泥沼を這うみたいな人生を送っていたとしても、豊かな瞬間はあるんだと思えた。

うっかりしていると、特に意識されずに流れてしまうようなシーンなんです。こいつら、このあとあんなことになっちゃうのに、この瞬間だけは光り輝いているって。そう思うと何度観ても泣きそうになってしまう(笑)。

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