マル暴刑事が起こした警察史上最大級の不祥事!映画『日本で一番悪い奴ら』白石和彌監督インタビュー

それと話がいちいち面白い。覚醒剤をやるとタバコを吸いたいという欲求がなくなるんだそうです。それ聞いて撮影中、覚醒剤を打ち始めた以降の諸星にはタバコを吸わせないようにしたんですが、さらに稲葉さん、ニヤリと笑ってこんなことを言うんです。

「だからね、みんな禁煙したければ、シャブ打ちゃいいんですよ」。

いやいやそれ、倫理観間違ってるし!って(笑)。そんな冗談を言うような、どこか人を惹きつけるお茶目な人で、ひと言でいえばチャーミングなんです。笑うと笑顔がかわいくて、でもやってきたことが半端ないんで、余計そう感じるのかもしれませんが(笑)。

綾野剛が目の前に現れた!

―それでは次に映画のお話をうかがいたいと思います。前作の「凶悪」は『凶悪 ある死刑囚の告発』(「新潮45」編集部編・新潮文庫)が原作で、本作と同様にノンフィクション作品です。ノンフィクションをフィクションにする難しさ、また楽しさを教えてください。

どこまで描いていいのかということは常に考えていますね。「日悪」はピカレスク(悪漢)映画です。そのことに間違いはないのですが、一方で僕はスタア映画にもしたかった。かつて石原裕次郎さん、高倉健さん、松田優作さんといった、その時代の寵児ともいうべきスタア俳優が躍動する映画がありました。これもそんな作品にしたかった。

だから主人公の諸星要一を演じる役者は、これからの映画界を背負っていってくれるような人にお願いしたいと思いました。

先ほど稲葉さんに会う前は彼が硬派なのか軟派なのかイメージがつかなかったという話をしましたが、諸星についても同様で、どんな俳優に演じてもらえばいいんだろうって悩みました。しかも諸星の22歳から48歳まで、実に26年間の半生を演じなければならない。単にスタア性があるというだけでは到底やりきれる役じゃない。

そんなとき目にとまったのが綾野さんです。当時『そこのみにて光輝く』(呉美保監督・2014年公開)でヨコハマ映画祭や毎日映画コンクールで主演男優賞を獲り、イケイケだったしエロかった(笑)。年齢も32歳(当時)でちょうどいい。

そもそもピカレスク映画って、映画会社は制作に二の足を踏むところがあるので、これから先、いつこうした映画を作れるかわからない。でも今回は作らせてもらえる。そういう少ないチャンスに綾野剛という役者が僕の目の前に現れた。

これは大げさに言えば運命的なタイミングなんだろうと。それで迷うことなく綾野さんにお願いしました。

―実際、一緒にお仕事されて、綾野さんにはどんな印象を持ちましたか。

本当に底が見えない役者さん。現場ごとに新しい発見があるんですよ。勘でやってるフシもあるし、計算ずくでやってるようにも感じる。演出家として僕が至らなかったからかもしれませんが、把握しきれなかった、というのが正直なところですね。

この仕事でシャブ中の悪徳刑事をやってからも様々な方面で活躍して、気がついたら宝くじのCMにも出ている。それ見てこっちは「エーッ!」って(笑)。作品ごとに違う顔をしている人。僕が知らない“綾野剛”が、まだまだたくさんあるんだろうなと思います。

だからこそ一度仕事をしたらもう一回一緒にやりたいと思わせる、そんな俳優です。

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