牛丼チェーン「戦国時代」崩壊と繁栄のドラマ〜値下げ戦争、狂牛病ショック、ワンオペ…

村瀬 秀信 プロフィール

ファミリー層にもハマったすき家

続いては、練馬区の中華料理店という地方の一豪族から全国屈指のチェーンに成り上がった"江古田の虎"松屋。

元々は創業者が吉野家の牛丼に強烈な感銘を受けて、その道に参入。研究を重ねてオリジナルの「牛めし」を完成させると、カレーの他「デミたまハンバーグ定食」「カルビ焼肉定食」なんて定食モノまで充実。さらにみそ汁が無料という「味噌只吞の計」、カルビ焼肉などでWサイズの2人前を用意する「二個強食の計」など、独自の軍略で躍進を果たした。

最も有名な策は2000年9月、300店舗達成記念として牛丼を290円に値下げした「連環の計」だ。この策で牛丼界は値下げという鉄の鎖で繫がれ、全員道づれとなった。

そして最後が、現在のチェーン牛丼界の天下に最も近いところにいる"乱世の奸雄"、すき家。82年に横浜で創業するや、05年には牛丼界の古豪・なか卯をグループに併合。あれよあれよと全国出店店舗数、売り上げを共に伸ばし、気がつけば業界ナンバーワン。

これまでの牛丼の常識に囚われず、広く人材(食材?)を求め、積極的に登用していくスタイルは、豚丼、まぐろ丼、あいがけカレーのほか、牛丼だけでも「ハーブチーズ」「高菜明太マヨ」「わさび山かけ」などのトッピング、さらには「ひつまぶし」ならぬ「牛まぶし」なんて奇抜すぎる牛丼を生み出しました。

それが、「ミニ」から「メガ」、肉が6倍量の「キング」なんて裏メニューまである幅広いサイズから選べてしまうのだ。

こうした選択肢の多さは、この外食不況時代、牛丼のメイン客・独身男性だけでなく、ファミリー層にもハマった。すき家のCMを見れば、加藤浩次、ともさかりえらが扮する「牛丼家族」が「パパはメガ牛丼!」とやり、21世紀型新幸せ家族の理想的外食模様を世間に呈示した。恐るべき先見性だ。

そして、熾烈な値下げ競争でもすき家は他2店に比べ、常に一歩先を行くなど、時代の潮流を上手く捉えて、天下人へとのし上がっていくのである。