トイレで連れション中に人事発令!? ソニーのトップシークレットを知り尽くした新人時代の特異な体験談

島地勝彦×植山周一郎【第3回】
島地 勝彦 プロフィール

植山 いやいや、それが、そんな生やさしいおできではなかったんですよ。ぼくのいないところで両親が別室に呼ばれ「息子さんは大腸癌です。手術しても助かる可能性は3%しかない。それでもやりますか?」と宣告されたらしい。そのころ癌の宣告は本人にはしませんでしたから。

シマジ いまとちがって癌は死に直結する病だったものね。

植山 下血するまでは、大学で野球をやったりして、凄く元気に動き回っていたから、病気なんてまったく疑いもしなかった。それでバッサリ切ってもらって、1ヵ月ぐらい入院したかな。そしたらすっかり治っちゃってね。でも大学に戻ったら、もう就職試験が全部終わっていて、さあどうしようと思案に明け暮れました。

ヒノ 一橋大学の商学部を出て行くところがないというのは不憫ですよね。

植山 そうでしょう。しかたないから外資系の会社でも調べてみようかと、人材銀行に行ってみたわけ。そしたら「うちに入らないか」って誘われたんですよ。「ぼくは人材銀行に入るためにきたんじゃないです」と断ったんだけど、「うちはいま多角経営の1つとして、日本ではじめてスチュワーデスの養成学校を作ることになっている。君はそこの校長にならないか」と引かないわけ。

まあ、ほかに行くあてもなかったし、とりあえず4~6月の3ヵ月間くらいやったのかな。80人くらいの若い女性に英語やプロトコールを教えたりしていましたが、やっぱり神さまはいたんですよ。ソニーが面白い新聞広告を出していたんです。「英語で啖呵を切れる日本人求む」と。

シマジ ああ、有名な広告だよね。

植山 そうそう、アレ。で、これは俺しかいないと思って応募したのね。100人くらいきていたかな。ほとんどが海外留学経験者って感じでした。そのうちの10人が最後まで残って、創業者の盛田昭夫社長の最終面接を受けることになったんです。

盛田社長が「君はアメリカにもドイツにもいたようだが、ソニーに入ったらどこへ行きたいかね」というから「日本がいいです。ぼくはお寿司が大好きで、日本酒を飲みながら寿司を摘むのが最高なんですよ。海外に行ったらあんな美味いものは食べられない」と抗弁しました。

そしたら盛田さんは「冗談いっちゃいけない。われわれはいま海外進出を一生懸命やっていて、海外要員の募集をしているんだ。入社して日本で寿司ばかり食われたら困るんだよ」というわけ。そして「どうだ、外国に行くか?」とぼくにたたみかけてきたんです。

そこでぼくはすかさず「行くと約束したらソニーに入れてくれますか?」と反撃した。すると盛田さんはニッコリ笑わって「よし、入れてやる」というんで、ぼくも「じゃあ外国に行くことを約束します」と答えました。面接の真っ最中に合格通知をもらっちゃったの。

シマジ わたしも集英社の最終面接で同じような思いをしました。人生にはそんな運命の出会いってあるものだよね。

植山 シマジさんはそのころから目立っていたんでしょうね。

ヒノ シマジさんの格言にあるように、やっぱり「人生は運と縁とセンス」なんですね。