公園で牛と闘う特訓をしていたら、日本一の空手家になっていました【最強さん、いらっしゃい!第二回】佐竹雅昭・前編

細田 マサシ

優勝賞金100万円

──いかにも80年代のコピーですねえ(笑)。
佐竹 でも、月謝が3000円。当時の極真は6500円だったからこれは大きかった。それに「今、入会すると、キックミットをプレゼント!」「なにー!」ってことで、一体どんなもんか、一度見学に行こうとなった。忘れもしない遠足の帰りですわ(笑)。

──運命の遠足の後!
佐竹 それで中に入ったら、BGMかなんか鳴っててポップな感じなんですよ。「なんや、このナンパな感じは」と。そしたら「あ、見学? よく来てくれたねえ。いやあ、君、大きいねえ。まあ座って座って」って出て来たのが石井(和義)館長。

──おお、邂逅ですね。
佐竹 それで、しばらく見てたんだけど、「これほんまにフルコンタクト(直接打撃)空手なんかなあ」って思ってたところで、いきなり稽古に現れたのが、中山猛夫! 第9回極真全日本大会準優勝のスターですわ。

当時の空手少年にとっては、本当に憧れのスターでした。イケメンですしね。「なんで、ここに中山猛夫がおるんやろう!」って。当時中山師範は極真を離れて正道に移った時期だったんですね。それにまずびっくりしたのと、稽古風景も新鮮でね。白帯でも組手をやっている。極真は白帯の組手が禁止だったんですよ。それで「うわあ」って心を持っていかれて。

──中学生が心を持って行かれるって、人生の左右する大事件ですからね!
佐竹 その直後に正道館第1回全日本大会があったんだけど、当然観に行ったわけ。そしたら圧倒的な強さで中山師範が優勝して、僕はスタンディングオベーション!「これや!」って感動して、それで正道に通うようになったんです。中山師範を筆頭に、今西靖明先輩、川地雅樹先輩と、強い方が揃っていて、ノリの軽さも自分のキャラクターと合ってたなあって思いますね。特に憧れの中山師範の指導を受けることになるんだけど、本当に幸せだなあと。

──それはスター選手だからですか?
佐竹 もちろん、それもあるけど。やっぱり日本一の人に教わるワクワクですよね。だって日本一の人はどういう練習をしているのか、どういう動きをするのか、すべてが日本一の基準値でしょう。これは格闘技だけではないんですよ。ビジネスの世界でもなるべく「その道のトップ」に会っておくのが大切なのはそういうことなんです。

──なるほど!
佐竹 自分も日本一になるにはどうすればいいか、実にわかりやすいし、まあ練習もきつかったね。でも強くなっている実感があったから。だって中山師範は「佐竹君、俺たちは拳ダコばっかり作ったって仕方ないやん」って言う人で、「こんな拳にタコを作っても人は倒れん」「俺たちは人を倒すのが仕事やろ。だったら人で拳を鍛えればええねや。だから組手や。実戦経験積まなあかん」って。

──合理的ですね。
佐竹 「相手が痛がるような蹴りをするのは人で覚えろ」「相手にタイミングよく当たる打ち方は練習でしか身に付かんで」って。発想が面白いでしょう。つまり実戦至上主義。とにかく格闘技強くなりたかったらスパーリング、組手。でも実戦に対応するためには、道場以外で走ったり、ウェイトトレーニングやったりとかっていう、体力づくりをやる必要もあるわけ。でも、道場というのは対人練習の場だと。そういう中山師範のお陰で僕は凄く効率よく実践的な稽古が積めたなあって。

──これが最強への道ですね。
佐竹 事実それが近道ですからね。それで大学卒業の年には正道会館の全日本大会で優勝して、空手日本一の目標が叶ったんですよ。その後3連覇するんで、優勝賞金100万円×3回で300万。副賞のクルマも3台!

──舛添都知事より持ってますね(笑)。