公園で牛と闘う特訓をしていたら、日本一の空手家になっていました【最強さん、いらっしゃい!第二回】佐竹雅昭・前編

細田 マサシ

公園で毎日自己流の特訓

──具体的に行動に移したんですか?
佐竹 まず、家の裏の公園の木を蹴り始めた。それも毎日! でも、公園の木を、十四歳の男の子が毎日「エイ、ヤ―ッ」って蹴っているんですよ。普通どう思います?

──そりゃあね……
佐竹 でしょ。当然「佐竹さんのところの長男はどうかしてるで」とか「やめた方がええんとちゃうか」とか、笑われてたと思う。それでも僕はまったく気にならずに木を蹴り続けた。だから「ドコドコ中の番長は強い」とか「誰それに喧嘩で勝った」とかいろんな話が入ってきても、全然気にならんかったね。別世界の話に感じてね。

──完全に外部遮断ですね。
佐竹 そんな自己流の稽古からちょうど一年くらいたったある日、一人の男の人が話しかけて来た。「君、ずっとやっているねえ」って言うんですよ。「毎日ここで木を蹴っているねえ」って。

──ほお。
佐竹 その人は「極真会」のマークが付いたジャージを着ていた。つまり極真空手の人だったんです。僕も「おお、極真の人やあ」って思うじゃない。そしたら「構えてごらん」って言うから、本で読んだ自己流の構えをしたら、「腰が高いんだよ!」っていきなり蹴られた(笑)。

──うわあ!
佐竹 もうね、痛みと破壊力が半端なかった。でも「これが極真なんだ」ってある意味感動してね。次に「突きをやってごらん」と言われて、本の分解写真で見た通りにやったら「違う、こうだ!」と。その一突きを見て「本って意味なかった」って(笑)。

──じゃあ通信講座もだめですね(笑)。
佐竹 当たり前の話だけど、やっぱり人から直接習うべき(笑)。そこから一時間くらい稽古をつけてもらってね。その後公園のベンチに座っていろいろ話をしたんだけど、そのときに「君は一体何になりたいんだ?」って訊いてきて。

──ほう。
佐竹 それで「山籠りをする」とか「牛を殺す」とかアホなことを言うて(笑)。そしたらその人、ニヤッと笑って「他には?」って言うんで、「じゃあ空手で日本一ですかねえ」って言ったら「あ、それならなれるよ」とあっさり答えるんですよ。「なんでなれるか教えてやろうか」と言われたから「教えて下さい!」と。

──気になりますよねえ。
佐竹 「君はね、人に笑われることをしているからだ」と言うんです。最初はどういう意味やろうと思いましてね。そしたらその人は「君、なんで人は笑うか知っているか?」とさらに訊いてくるんです。

──禅問答みたいですね。
佐竹 「なんでしょう」って答えたら「それはね。誰もやらないことを笑うんだよ」と。「誰もやらないってことは、先頭に立ってレールを敷いていることなんだ。だから君はその資格があるんだよ。人からバカにされた笑いを、いずれ拍手に変えてやりな」って。

──感動するなあ!
佐竹 僕もハッと目が覚めたような気がしてね。確かにバロメーターとして考えると、人からバカにされるくらいじゃないと、偉業って達成できないんですよね。エジソンしかりライト兄弟しかり。