こんな体位、ありえない!? 江戸庶民が愛した「豆判春画」、その奥深き世界

なんと大らかな性風俗
浅野 秀剛

京都や大坂でも制作された可能性はあるが、確かにそれだといえるものは確認していない。19世紀の江戸の浮世絵師というと、歌川派の国貞・国芳・広重、そして葛飾北斎一門、菊川英山・渓斎英泉といったところが直ちに脳裏に浮かぶが、国貞・国芳・英山・英泉が描いたことはほぼ確実ということ以外に、詳細は不明というしかない。

女に迫る銭湯の三助(使用人)

歌川国虎や恋川笑山の作もあるが、今のところ断片的にしか分からない。そもそも購買者が、誰の作かということを判断の目安にしたかどうかも分からないのである。1セットいくらであったかも不明であるが、今の価格でいえば500円、1000円くらいで買うことができたと推定される。

だから、本屋に勧められて、あるいは店頭で見て(店頭に堂々と置かれていた可能性は低いが奥には置いていたであろう)、ちょっと面白そうなものを買うという情景が思い浮かぶ。

文化期から幕末の江戸の春画の代表作といえば、三冊ものの極彩色の大本が過半である。近年は、それらの研究が進み、もはや、北斎・国貞・国芳といった浮世絵師の版本の春画が新しく発見されるということはほとんどなくなったが、そういった高価なものが制作される裏側で、豆判春画のような小さく安価なものも制作・供給されていた意味は小さくない。

手のひらサイズで誰もが気軽に買えるものであるからこそ、そこには江戸の春画のエッセンスが凝縮されているのである。

それを一言でいえば、セックスを介したファンタジー、笑いの世界である。局部を広げ、ありえない体位で交わり、まさかという場所で突然行為に及ぶという豆判春画の世界は大らかな笑いに満ちている。

じめじめしたところは全くない。人間の基本的な営みであるセックスを理屈抜きに肯定し、いかに楽しんでもらうかということに心を砕いている。本書を手に取って、ほとんど原寸で紹介した豆判春画の魅力を堪能していただきたい。

資料提供:浦上満

本記事に掲載されたのはごくごく一部。『豆判春画』は好評発売中(amazonはこちらから)

本書は、7月8日(金)から、電子書籍配信予定です。