島耕作、ただいまプチ炎上中!?突然の「設定変更」について、弘兼先生に直接真相を聞いてみた

ついでに、今後の「島シリーズ」の行方についても…
現代ビジネス編集部 プロフィール

語られてこなかった60年代史を描きたい

「島耕作」シリーズを続けて30数年が経ちました。島が会長になったのが3年前。こうなったら、学生編もやりましょう――イブニング編集部にそう言われてはじまったのが『学生 島耕作』です。

島が早稲田大学に入学したのは1966年の春。当時の大学生活を描くなら、学生運動を避けて通るわけにはいきません。だから、学生運動は今シリーズの大きなテーマになっています。

入学試験の時に島と出会った「クラムチャウダー(本名・東北沢淳」という登場人物が、入学後すぐに学生運動に参加して、機動隊と衝突するまでにのめり込んでしまう。そんな彼の視点を通じて当時の学生たちが目指していたものを描き、一方で友人である東北沢を救おうとする島の目から、その問題点を描く。まったく違う道を選んだ2人の運命がどう展開していくのかが、本作の読みどころのひとつです。

私自身は、ノンポリの学生でした。私は山口県の岩国出身なんですが、早稲田に合格後に住んだのが、岩国市が運営している学生寮。その寮の理事を佐藤栄作さんや岸信介さんが務めていたので、学生運動をやるなら寮を出ていきなさい、という方針だったんです。それがすべての理由と言うわけではありませんが、運動とは距離を置いていましたね。

学生時代の弘兼先生。貴重な写真だ

当時の早稲田は、私のようにノンポリの学生がほとんどでした。にもかかわらず、60年代の大学を舞台にした本や作品のほとんどが、学生運動を中心にして書かれてる。僕の中では、「運動も盛んだったけど、そればっかりじゃなかったよね」という気持ちもあった。

だから『学生 島耕作』では、これまであまり語られてこなかった文化や風俗、娯楽をふんだんに登場させています。それこそ、歴史の資料になるようなものにしたいと思っています。

たとえば島が寮の仲間たちと遊びに行った「ヌードスタジオ」。おカネを払って個室に入ると、女性が座っていて、その女性が裸になって踊るのをただ眺めているだけの店なんだけど、アダルトビデオもない時代には、女性の裸を見るにもひと苦労で、大変重宝したんです。今の若い人には信じられないでしょうね。

そういうものを、描いて残しておきたかった。あとは「はつり」のバイトもね。建設現場で出るコンクリートの塊を鉄のヘラで取っていく仕事。島も私もこれを経験するんですが、これは当時の定番のバイトで、前都知事の猪瀬直樹さんと飲んでいたときに「俺は学生時代にはつりをやっていたんだよ」と何かの拍子で話したら、「えっ、俺もやってましたよ!」とはつりの話で盛り上がった(笑)。

そういう、当時を生きていた人たちが「あったあった!」と共感してくれるような文化や風俗、遊びをふんだんに盛り込んでいますので、当時を知る人たちには懐かしがってほしいですし、知らない人たちには驚いてほしいですね。

今の若者たちをみて思うこと

学生運動といえば、いま、SEALDsに代表されるように、若者たちの間でまた政治的な運動が盛り上がっていますよね。若者たちが政治に関心をもって行動するのは全面的に賛成。彼らが動かないと、この国はかわりません。

一方で、彼らを見ていると少し複雑な気持ちになるのも事実です。

今の学生たちは、SNSを駆使してメッセージを発信したり、ラップや音楽にのってデモ行進をしたりと、とてもファッショナブルで明るく活動しています。それを否定することはしませんが、60年代の学生運動を知っている身からすると、もう少し気迫のある行動をしないと、政治を動かすことはできないんじゃないかと思うんですね。

ただ、反面攻撃性が増し過ぎると、当時の学生運動のように暴力的になってしまう可能性がある。もちろん、それは避けてほしい。もう少し気迫をもって、しかしながら過激にならないような活動を…と思うのですが、それは理想的すぎますかね。

いずれにせよ、若くてエネルギッシュな彼らを見ていると、うらやましくもあります。私はもう68歳。彼らのように活発に行動することはもう難しいですが、その分、学生時代の島耕作の体を借りて、思いっきり遊び、思いっきり悩み、思いっきり動き回ってみようと思います。