被害総額2000億円!豊田商事「会長刺殺事件」の凄惨な結末

バブル前夜に起きた巨額詐欺事件
週刊現代 プロフィール

吉岡 そうした時代背景があるから豊田商事は急成長し、2000億円という莫大なカネを集めることができた。でも永野自身の生活は質素そのものだったようです。

殺された時の所持金はわずか711円。遺品で目ぼしい物は、30インチのブラウン管テレビとカラオケセットだけ。あとは舟木一夫とか歌謡曲のLPレコードと本が100冊ほど。金儲けと田中角栄に関する本がほとんどだった。

西村 小型飛行機やクルーザー、ランボルギーニなどのスーパーカーを所有していたそうですが、その一方で住まいは大衆的なマンションと、実にアンバランスでした。

吉岡 要はおカネの使い方をまったく知らなかったんだよ。典型的な成金。でもそれは永野だけじゃない。バブル前夜のあの時代は成金がたくさん生まれたけど、彼らはその稼いだカネを何に使うのかがわからなかった。人間がカネに支配された非常に「いびつな時代」だったと思う。

冨村 永野が貧しい生活を送っていた一方で、豊田商事の幹部社員たちはすごくいい暮らしをしていた。一部の幹部は、1000万円もの月給をもらっていた。

吉岡 当時としては珍しいオートロック付きのマンションに住んでいたからね。永野のマンションとは大違い。永野に同情の余地はないけど、結果から見ると、利用され、祭り上げられただけだったのかもしれない。

西村 いわゆるカリスマ性とか「巨悪」という印象はありませんね。恐らく消火器を売りつけていた時と同じ感覚のまま、気づいたら2000億円も騙し取っていた感じではないでしょうか。

冨村 永野は、「(会社が)こんなに大きくなるとは思っていなかった。これだけの規模にしたのは、部下がやったこと。でも、これだけ大きくなってしまったら、もうお仕舞いだ」と言っていたそうです。永野には自分の行く末が悲惨なものになるとの予見はあったのでしょう。

西村 もし永野が生きていれば法廷でいろいろなことを喋っていたはず。カネの流れも分かっていた可能性があると思うと残念ですね。

冨村 豊田商事のセールスマンの中には、自分が詐欺に関わっているとの自覚を持っていた人も多いけど、それをすべて立件するのは、不可能だったからね。

吉岡 事件から30年が経過し、法律も整備され経験値も上がっているはずだが、類似の詐欺事件は後を絶ちません。豊田商事の残党が関わったと思われる事件も起きている。人間のカネに対する執着はいつの時代も変わらないのかもしれない。

豊田商事事件 / 現物まがい商法(ペーパー商法)を手口とする組織的詐欺事件。高齢者を中心に数万人が被害に遭い、被害総額は2000億円に上った。'85年には、会長の永野一男がマスコミの前で二人組の男に惨殺される。その様子がテレビで放送され世間に衝撃を与えた

 「週刊現代」2016年6月18日号より