被害総額2000億円!豊田商事「会長刺殺事件」の凄惨な結末

バブル前夜に起きた巨額詐欺事件
週刊現代 プロフィール

西村 男は「警察を呼べ! 俺が犯人や」と報道陣に向かって叫び、アパートから出たところで逮捕。駆けつけた警察に対しマスコミが「(犯人を)早く逮捕せえや」という声も流れました。

吉岡 当時の報道を見てみると、犯人が現場に現れて部屋に入るまで15分ぐらいマスコミとやり取りをしている。視聴者からは、「現場にいながら、なぜ報道陣は止めなかったのか」、「マスコミも同罪だ」という批判が出ました。

西村 止めに入ったら、何をされるか分からない恐怖はもちろんありましたが、僕たちマスコミはあくまで「報道が第一」だと考えていた。

 

警察はなぜ動けなかったか

吉岡 永野は、衆人環視の中で殺されたと思っている人がいるかもしれないが、二人が窓から入ったあと、カーテンが邪魔で、室内で何が起こっているのか分からなかった。

西村 まさか殺すとは、その場にいた誰もが想像していませんでした。これは推測ですが、犯人たちも最初は殺すつもりはなかったと思うんです。「目立ってやろう」と来ただけなのに、報道陣を前に引っ込みがつかなくなってしまったのかもしれない。

吉岡 確かにインタビューを受けている時もニヤニヤして悲壮感はまったくなかった。のちに裁判で彼らは「殺すつもりはなかったがマスコミに煽られた」と主張しているけど、あれは一部本当かもしれないわけか。

西村 永野の刺殺については、警察の捜査にもミスがあると思います。犯行の前日に、兵庫県警が外為法違反で永野のマンションを捜索し、それで永野が自宅マンションにいることが世間に知れわたってしまった。その段階で建物の入り口を、警察官が警備していれば、犯行は防げたはず。

冨村 それに関しては、警察も批判されて致し方ない。この時すでに事件は社会問題化しており、永野に対する世間の非難も頂点に達していた。永野に怒りを持つ者が、突発的な暴挙を起こす可能性は予測できたはず。

西村 なぜ警察は、永野の逮捕に踏み切らなかったのですか。

冨村 詐欺で立件するには、証拠が少なすぎたんです。当時、まだ豊田商事は破産しておらず営業活動中。そんな中、強制捜査を行うと「警察や検察に営業を妨害された」と主張し、破産の口実にする可能性があったからです。そうなれば詐欺として立件するのが難しくなる。

吉岡 豊田商事事件が起きた当時は、経済犯罪に警察も慣れていなかったですからね。2000億円の詐欺なんて常軌を逸しているから、「普通のビジネスなんじゃないか」という認識が警察にあったのかもしれない。最初の段階では利子も払っていたし、すぐに違法とは言えなかったのでしょう。