和田毅「実際より速く見える」のはなぜか?
~球界きっての“思考派”の源流を探る

二宮清純レポート
週刊現代 プロフィール
〔photo〕gettyimages

メジャー初勝利はシカゴ・カブスに移籍した'14年7月28日。この年、13試合に登板し、4勝(4敗)をあげた。

翌'15年は、わずか8試合の登板にとどまった。勝ち星もひとつだけ。期待された程の活躍ができなかった米国での4年間だったが、和田は次への布石を打っている。

カットボールとツーシームをマスターし、プレートの立ち位置を、日本時代の一塁側から三塁側へと変えたのだ。

いったい、どんな狙いがあったのか。

「三振」から「芯を外す」へ

「手術後、真っすぐだけでは通用しなくなった。とりわけメジャーの強打者に対し、フォーシーム(素直な直球)だけでは抑えられません。向こうの強打者はぎりぎりまで(ボールを)引き寄せ、芯でとらえようとするので、芯を外すようなボールを覚えないとやっていけず、球数も減りません。それで覚えたのがカットボールとツーシームだったんです。

この2つのボールを効果的に使うにはプレートの真ん中から三塁側を踏んだ方がいい。そうすることで腕がプレートの真ん中を通るんです。

右バッターから見れば、カットボールは食い込み、ツーシームだと外に逃げていく。つまり両方向にボールを散らすことで、芯を外すことが可能になったんです」

'14年まで巨人の投手総合コーチを務めた川口和久は〝サウスポーの視点〟から、和田の投球術を、こう分析する。

「要するに43・2cmあるホームベースの幅を、うまく使おうという発想ですよ。右バッターにすれば、一塁側のプレートを踏んでいた時よりも、近いところでボールが変化する。逆にツーシームはストライクゾーンから外に逃げていく。ホームベースの幅を広く使うことで、ピッチングの幅も著しく広がったんじゃないでしょうか」

カットボールにしろツーシームにしろ、バッターはストレートのつもりで打ちにいく。

とりわけ和田の場合、冒頭でも述べたようにリリースの瞬間がわかりづらいため、ボールの正体を見極めるのに時間がかかる。打ち損じが多いのは、そのためだろう。