メジャー挑戦から帰ってきた選手が、かつての輝きを取り戻せずに苦しむケースが目立つ。だが、5年ぶりに古巣に戻ったサウスポーは新たな投球術を習得し、その輝きを一段と増している。
福岡ソフトバンクの和田毅は、業界ではカメラマン泣かせのピッチャーとして知られている。リリース、すなわち指からボールが離れる瞬間を、思うようにファインダーにおさめることができないのだ。
「いいピッチャーほど(リリースの瞬間が)撮りづらい」
こう持論を述べるのはソフトバンクの公式カメラマン・繁昌良司だ。
「通常、左ピッチャーに対しては一塁側でレンズを構えます。リリースの瞬間を狙うのですが、シャッターを押すタイミングが難しい。
普通のピッチャーは同じタイミングで投げてくる。だから何球か投げているうちに、だんだんタイミングが合ってくるんです。
ところが和田だけは最初から最後までタイミングが合わない。おそらく微妙に(リリースの)タイミングをずらしているんでしょう。シャッターを押すタイミングがとれないリリースポイントなのに、どうすれば打てるのか。バッターも大変だと思いますよ。
以前は、たまに撮りやすい日もあった。案の定、その日は打たれていました。今年は、ほとんど(撮りやすい日が)ないように感じられます」
その話を、和田に向けてみた。
「よく、そう言われます。確かに僕の写真って、だいたいリリースの前か後なんですよ。リリースのまさにその瞬間というのは、僕自身あまり見たことがありませんね」
現在、今季8勝2敗(両リーグトップ)、防御率2.97。パ・リーグの勝ち頭である。
4月20日、QVCマリンでの千葉ロッテ戦では日本球界復帰後、初の完封勝ちをおさめた。