【感動秘話】広島カープ、悲願の優勝へ〜知られざる黒田博樹と新井貴浩の「約束」

マエケンが抜けても、この二人がいる
週刊現代 プロフィール

育ての「親」に恩返しを

半世紀近く広島の取材を続けるスポーツライターの駒沢悟氏が明かす。

「バットを決して振り回さず、機動力を生かすところは、昔の赤ヘル軍団を思い出させますね。

黒田も新井も、自分の成績より、チームの成績がよければそれでいい、という男たちです。プロの中に高校野球の選手が混じっている感じ。ただ、二人とも満身創痍で、ある意味失うものはない。今季やれるだけやって、ダメなら潔くユニフォームを脱ぐぐらいの覚悟はできていると思います」

日米通算200勝までカウントダウンに入った黒田はメジャー時代の'09年、右側頭部に打球を受けた後遺症による首痛、それに伴う右肩痛を何とか和らげながら投げている。親しい関係者には「球は140km以上出ても、疲れが取れにくくなった」ともらし、年齢による衰えと戦っている。

新井も慢性的な腰痛に加え、昨年5月に脱臼した左手中指も手術をせずに今季にのぞんだ。指を手術するとしばらくバーベルを握れなくなり、新シーズンにむけ、ウェートトレーニングによる体作りができないからだ。この1年に懸ける思いは、強い。大野氏が二人の影響力をこう明かす。

「黒田は『この1試合で壊れてもいい』と思って全身全霊を尽くす。だから、打球が自分の体を強襲しても、本能的に右手を出す。新井も今年のバッティングは必要に応じて、センターから右方向に打ち返している。二人に共通しているのは、『25年間、優勝から遠ざかるチームで勝ちたい』というフォア・ザ・チームの思いです。彼らの姿勢は、若い選手のいい教材になっています」

二人の悲願は、育ててもらった赤ヘル軍団への恩返しになる、有終V。それが二人が交わした無言の「約束」である。

「週刊現代」2016年6月11日号より