イギリス「EU離脱」をめぐる大混乱の実情~「タブー」に触れ、怒鳴り合う政治家たち

戦争、ヒトラー、DIY不景気…
小林 恭子 プロフィール

強烈な表現が行き来する議論

大多数の国民にしてみれば、「一体、だれを信じたらいいのか」という状況だ。

そんな気持ちを代弁したのが超党派の議員数人で構成される下院の財務委員会の報告書(5月26日)だった。

報告書は残留派および離脱派の主張は「一貫性がなく……誤解を招くような主張がある」と指摘した。

経済論議では勝てないと見た離脱派は国民の大きな関心事の一つ、移民問題に目を向け始めた。26日、国家統計局が2015年の純移民数(英国を出た人とやってきた人の差)がこれまでで最高の33万人に達したと発表した。この中でEUからの移民は18万4000人を占め、これも史上最高となった。

3日後、離脱派のジョンソンとゴーブ司法相はキャメロン首相あてに公開書簡を出し、政府が「移民を10万人規模に抑える」とした約束は「国民の信頼を裏切った」と非難。国民投票で離脱が選択された場合、首相の退陣を迫る書簡として受け止められた。すでに結果がどうであれ、キャメロン首相は退陣するべきと言う声も保守党内では上がっている。

フィナンシャル・タイムズのコラムニスト、ジャナン・ガネッシュは5月31日付のコラムで、「保守党の内紛が国民をしらけさせる」という記事を寄稿した。「国民の関心は高く、総選挙よりも重要であることは認識されている」が、「感情的な発言の応酬には何の意味もない」。

「戦争」、「ヒトラー」、「DIY不景気」――覚えやすい、強い表現が行き来する一方で、両陣営の経済に関する数字は反対するグループがすぐに批判するため、あっという間に信頼性を失ってしまう。