世界的にもこんなの異常だ! 在日米軍だけがもつ「特権」の真実

沖縄女性遺体遺棄事件から考える
伊勢崎 賢治 プロフィール

フィリピンとアメリカの「対等」な関係

同じようにアメリカの占領時代を経たフィリピンのケースは、特記に値する。

アメリカの植民地であった同国は、現地の経済や文化と深い関係を築いてきたスービック湾海軍基地やクラーク空軍基地を含め、大規模な米軍基地を維持していた。日本の「思いやり予算」とは真逆に、アメリカは毎年数百億円もの「家賃」をフィリピン政府に支払っていた。

この「実入り」にもかかわらず、フィリピン米軍基地は植民地主義の名残だとするフィリピン国内の民族運動の高まりと、ピナツボ火山の噴火で基地の大部分が使えなくなったことを契機に、フィリピン政府は米軍基地の全閉鎖を決めた。1992年のこと。

その直後だ。中国が南沙諸島の実効支配を始めたのは。米軍基地は、やはり「抑止力」になっていたのだ。

その後、フィリピンは、アメリカとの関係修復に奔走する。それでも、以前のような地位協定ではなくVisiting Forces Agreement(VFA)、アメリカ軍はあくまで客人として訪れてフィリピンの基地を使ってもいい、という関係の協定を締結した。

基地の主権はフィリピン側にある(ちなみに、上記のアフガニスタンとNATOの地位協定でも、アフガニスタンの主権が明記されている)。ドイツやイタリアと同様、米軍が何をするか、何を持ち込むかは、フィリピン政府の「許可制」である。

さらに、フィリピンは、裁判権における「互恵性」も部分的に確保している。(米連邦諮問委員会Federal Advisory Committee任命の国際治安諮問会議2015年報告書”Report on Status of Force Agreements”, p25, http://www.state.gov/documents/organization/236456.pdf )

アメリカとの同盟関係を維持強化しながらも、対等で、かつ「(主権の及ばない)基地なき同盟」の一つの形であろう。

最後に、実は、日本は、”加害者”の側として地位協定を持っている。2009年成立のソマリア沖の海賊に対処するいわゆる「海賊対処法」の一環で、自衛隊が駐留するジブチ政府だ。

日ジブチ地位協定では、「公務内」「公務外」の両方で、日本は第一次裁判権を獲得している。これを、日本外交の勝利だ、最大限の国益達成だ、と閣僚に言わしめたのは、当時の民主党政権だ。

その国益に、沖縄の被害者は勘案されていない。そして、自衛隊の海外派遣に一番敏感でなければならない当時のリベラル、そして護憲派が、この「不平等さ」に反応しなかった。

日本人の「不感症」は極地に来ている。

伊勢﨑 賢治(いせざき・けんじ)
1957年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。インド国立ボンベイ大学大学院に留学中、現地スラム街の住民運動に関わる。2000年3月 より、国連東チモール暫定行政機構上級民政官として、現地コバリマ県の知事を務める。2001年6月より、国連シエラレオネ派遺団の武装解除部長として、 武装勢力から武器を取り上げる。2003年2月からは、日本政府特別顧問として、アフガニスタンでの武装解除を担当。現在、東京外国語大学教授。プロのト ランペッターとしても活動中(https://www.facebook.com/kenji.isezaki.jazz/)。著書に『武装解除 紛争屋が見た世界』、『本当の戦争の話をしよう』などがある。