日本人を苦しめる「一億総ランキング社会」という病

下り坂のこの国で大らかに生きるには?
週刊現代 プロフィール

平田 でも、貧乏だったけど「明日は絶対に今日より良くなる」と大抵の人が思っていた。

内田 何しろ、幸・不幸の比較対象が戦争ですからね。兵隊に取られたり、空襲で逃げ回ったり、食べ物がなくて飢えた経験と比べれば、「前よりずっと良くなった」と誰でも言いますよ。豊かさっていうのは物質的な豊かさだけじゃありませんから。

平田 それが今や、若者たちが「このままでは再び戦争が起きるのではないか」という心配までするようになっています。

内田 それは正しい直感だと思います。グローバル資本主義が成長の限界に達した時、さらに成長を目指すなら、もう戦争しか手立てがないんです。戦争が起これば、建物も道路も鉄道も上下水道も、生活に必要なものはすべて破壊され、作り直さなければいけない。だから、戦争した国は急激に経済成長できるのです。

国土を破壊し、国民を殺してカネを儲けるという倒錯した発想ですが、ビジネスマンは本気でそれを考える。ある財界人が「どこかで戦争でも起きてくれれば」と漏らしたそうですが、これは彼らの本音でしょう。

TPPも「経済効果14兆円」といいますが、これも国民がこれからまだ何百年、何千年と使い続けるはずの「手を付けてはいけない」自然や伝統文化を当座のカネに換え、短期の経済浮揚効果を狙うだけのものです。

この状況に抵抗するために、平田さんは「文化を守らねばならない」と書かれていますね。

少子化の本当の理由

平田 橋下徹さんが大阪府知事だったとき、貴重な本をたくさん所蔵していた大阪府の国際児童文学館を廃止しました。

当時、周囲の人たちは橋下さんに「絵本を読み聞かせることが子供たちにどれほど大事か」を説明したんですが、橋下さんは「オレは読み聞かせなんてされたことがない」と聞く耳を持たなかった。そういう文化に愛着のない人たちが政治の中枢にいて、日本の持っている有形無形の資産を切り売りしているわけです。