「1億円の接待費」「象1頭600万円」「ハードボイルドなパイプカット」……語り継がれる豪傑たちの伝説

第14回ゲスト:西木正明さん(後編)
島地 勝彦 プロフィール

作家としての生を全うした後輩に献杯

島地 作家の本分を全うしたといえば、昨年亡くなった船戸与一も早稲田の探険部で、西木さんの後輩でしたよね。

西木 年齢は確か4歳下だったかな。一緒にアラスカで越冬したことがありますから、まあ、ケツの穴まで知ってる仲ですよ。ガンでもう長くないらしい。そんな手紙をもらったときは、何かの間違いだろうって、なかなか受け入れられませんでした。

島地 俺は『山猫の夏』を読んで感動して、小説を書いてくれとお願いしたときからの付き合いでした。寡黙な男だったけど、素晴らしい仕事をしたと思う。

西木 最初に手紙をもらったときは「肺がんであと1年」と書いてあった。でも実は胸腺がんで、告知から7年も生きました。あれは物書きとしての執念でしょう。

島地 まさに執念だね。『満州国演義』を書き切り、最終巻が刊行された2ヵ月後に逝ってしまった。ほんとうにいい仕事をしたと思います。ご冥福を祈って献杯しましょう。

西木 では、献杯。

島地 ところで、さっきのパイプカットの話だけど、もっと詳しく聞かせてくれないかな。弟さんはいまも・・・

日野 もー、今回はせっかくいい感じで〆られると思ったのに、どうしてそこに戻すんですか。

西木 湿っぽいまま終わるのは性に合わない、シマジらしい転換が僕は好きですよ。しかし、まだパイプカットに興味があるなんて、お前こそ相当な無頼派じゃないか。

島地 どんな立派な人物であっても、下半身に人格はないんですよ。そうだ、今度、新宿伊勢丹でやっているバーに遊びに来てよ。

西木 聞いたよ。「シマジさんが新宿でバーをやってるらしい」って、作家仲間でも話題になることがある。でもシマジがバーマンなら、話はおもしろいし、博識だし、間違いなく繁盛するんじゃないかな。

島地 おかげさまで大繁盛しています。土日はだいたい店に出ているから、そこで話の続きをしましょう。

日野 他のお客さんもいるので、パイプカットの話は控えめがいいかと。

島地 いや、興味津々でみんな食いついてくるよ。

西木 どんなバーなんだよ、いったい。

〈了〉

西木正明(にしき・まさあき)
1940年、秋田県生まれ。本名は鈴木正昭。早稲田大学教育学部社会学科中退。その後、平凡出版(現マガジンハウス)に入社。26歳から14年間、『平凡パンチ』『週刊平凡』『ポパイ』編集部で過ごした後、80年に退職、作家活動に入る。その年に発表した処女長編『オホーツク諜報船』で日本ノンフィクション賞新人賞を受賞。以降、綿密な取材に基づくノンフィクションタッチの作品を次々と発表。88年、『凍れる瞳』『端島の女』で直木賞受賞。95年には『夢幻の山旅』で新田次郎文学賞、00年には『夢顔さんによろしく』で柴田錬三郎賞を受賞。大宅壮一ノンフィクション賞、日本推理作家協会賞、オール讀物推理小説新人賞、植村直巳冒険大賞、さきがけ文学賞の選考委員を務める。
島地勝彦 (しまじ・かつひこ)
1941年、東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任した。現在は、コラムニスト兼バーマンとして活躍中。『甘い生活』『乗り移り人生相談』『知る悲しみ』(いずれも講談社)『バーカウンターは人生の勉強机である』(阪急コミュニケーションズ)『お洒落極道』(小学館)など著書多数。Webで「乗り移り人生相談」「Treatment & Grooming At Shimaji Salon」「Nespresso Break Time @Cafe de Shimaji」を連載中。最新刊『蘇生版 水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』が好評発売中!

著者: 開高健、島地勝彦
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1989年に刊行され、後に文庫化もされた「ジョーク対談集」の復刻版。序文をサントリークォータリー元編集長・谷浩志氏が執筆、連載当時の秘話を初めて明かす。

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