次のような観測も出回っている。
「飯田氏の娘婿の人事が絡んでいるという声が上がっています。というのも、会長−社長の解任人事が発表された5月11日、新しい取締役人事も発表されたが、新任候補の中に娘婿の尾関一郎氏が入っていたのです。おのずと娘婿が将来的なトップ候補に急浮上してきたわけで、今回の人事もそのための布石だったのではないかと言われた」(同業他社幹部)
尾関氏は学習院大学を卒業後、住友銀行に入行。'01年からセコムのグループ会社であるセコム損害保険に移り、'10年には49歳という若さで同社社長に就任した。
「尾関氏は昨年4月にセコム本体の執行役員に就いたと思ったら、今年にはもう取締役候補。尾関氏の住まいは世田谷区の高級住宅街にあるのですが、同じ敷地内には飯田氏の豪邸がある。外見的には創業家社長誕生に向けて着実に歩が進められているように映るわけです」(前出・幹部)
こうした話について新社長の中山泰男氏に真偽を聞きたいと取材を依頼すると、セコム側は「スケジュールが一杯で受けられない」と拒否。代わりに広報担当者が「(今回の人事に創業者がかかわっているという事実は)ありません」と回答した。
「切られた二人」を直撃すると
では、解任された当人たちはどう答えるのか。
まずは、会長を解任された前田修司氏。世田谷区の自宅をたずねると、本人は在宅している様子。が、インターフォンに応じたのは夫人で、「本人が広報を通してくださいと申しております」と言うばかりである。
次に社長を解任された伊藤博氏は本人が応じたが、「何も話さないことにしています」の一点張りだった。
翌日にも二人をたずねると、この日は前田氏本人が応じた。
—解任人事についてうかがいたい。
「とにかく私はコメントしないことにしているの」
—納得しているのか。
「そのことについてのコメントはしないの。ここで質問していただいても私は答えません」
と、完全黙秘状態だが、最後にはなぜか、「ありがとう」と感謝の言葉を口にした。