野村克也と宮本慎也〜最強の師弟が語る「仕事と人生」のセオリー

「野球本史上最高のテキスト」と大反響
週刊現代 プロフィール

大切なのは「知力」

野村氏への取材経験も豊富なノンフィクション作家の後藤正治氏(69歳)は、宮本氏の賢さを評価する。

「野村さんは野球の中に『理』を持ち込み、野球学を究めた大家。宮本さんはその言葉を、自分の中で消化できた『賢弟』でした。

野村さんはオブラートに包まないで話す方なので、時として誤解を招き、離れていく人もいる。たとえば、宮本さんを試合途中に守備固めとして送り出す時、『(守備専門の)自衛隊』と呼んでいたそうですが、普通の選手なら傷つく。でも宮本さんはそれを、自分のプラス面と受け止めて『脇役の一流』を究めることに努めた。

2000安打と400犠打を同時に達成したのが球界で宮本さん一人だけなのを、本を読んで初めて知りました」

後藤氏と同様、野村氏への取材経験を持つスポーツライターの生島淳氏(48歳)が明かす。

「野村さんはものすごく勉強をされる方です。『私は監督時代、(評論家の)草柳大蔵さんや安岡正篤さんの本を繰り返し読んだ』とありました。

一般図書に関する話が多いのはラグビー日本代表を率いたエディ・ジョーンズさんも同じです。ほかのジャンルの話を、野球などの本業に生かそうとする姿勢が共通しています。

また、野村さんは『気力、知力、体力、3つの中で野球選手にもっとも不足しているのは知力だ』とも書いている。宮本さんはこの知力への好奇心が強かったと思います。

球界の師弟関係ですぐに思い浮かぶのは荒川博さんと王貞治さんに代表される稽古のような対面指導。でも、野村さんと宮本さんの関係は知的なつながりです。

野村さんから4年間、薫陶を受けたことは、宮本さんにとって大学の教授の教えを受けたゼミ生の感覚に似ていたと思う」