野村克也と宮本慎也〜最強の師弟が語る「仕事と人生」のセオリー

「野球本史上最高のテキスト」と大反響
週刊現代 プロフィール

リーダーは気づかせ屋

大正時代から続く料亭に生まれ、グアム三越の社長なども歴任、現在は個人や企業の目標達成にむけたコーチングに活動の場を移した上田比呂志氏(56歳)は、「習慣は才能より強し」という言葉が心に響いた。

「私も、努力の上をいくのが習慣だととらえています。何事も、習慣になればなるほど、その先に結果は必ずついてくる。

人への気遣い、おもてなしも同じです。『人を見ていい部分を探す』『自分だけでなく、相手を思いやって行動する』。そういったことに取り組む心の癖をつけ、習慣にしていく。それを無意識にやれるようにならないと、本当のおもてなし、とはいえないんです」

上田氏は、野村氏のリーダー論にも言及した。

「『リーダーは変化を促す気づかせ屋』という言葉にも、共感を覚えます。私が現在行っているコーチングも、何かを教える、というより、気づかせるということです。野村さんはさかんに考えることの大切さを説いていますが、教えすぎる行為は、結果的に相手の思考を奪ってしまうのです」

本の中では、宮本氏が若い頃、配球に対する読みの甘さを、野村氏に叱責されたエピソードも紹介されている。

「この本は教える側だけでなく、教わる側の目線でも書かれているので、説得力がある。リーダーだけでなく、部下の人が読んでもいいと思います」

今夏のリオデジャネイロ五輪で、2大会連続のメダルを狙うウェイトリフティング代表の三宅宏実の父・義行氏(70歳)は、自身もメキシコ五輪銅メダリスト。現在は全日本女子チームの監督だ。「師弟」双方の立場を感じながら指導にあたる。

「本の中で2人ともミーティングの大切さを説いていますが、私も言葉の使い方を大切にしているので共感できます。過酷なトレーニングの中で選手の支えになるのは、指導者の言葉なんです」

天候や球場の広さなど不確定要素が多い野球とは違い、ウェイトリフティングは1kg単位のアップを求めて歯を食いしばる競技。その中で三宅氏もまた、自主性を促す指導に膝を打つ。

「選手にはそれぞれ個性があり、自分の課題もわかっている。1から10まで教えてはダメなんです。10のうち、1か2を教える。後は選手自らが求め、学び取らないと、習得したい技術を獲得できない。宮本さんの『ID野球は、究極の自主性野球』という言葉は、十分理解できるんです」