135万部のベストセラー『嫌われる勇気』はこうして生まれた~構想16年、初版8000部からの挑戦

古賀史健, 上阪徹, 村上智子

10年越しで実現させた夢

上阪 そもそも、どういう経緯でこの本を作ることになったんですか?

古賀 僕がまだ20代の終わりだった頃、1999年のことです。池袋のジュンク堂でたまたま手に取った、岸見一郎先生の『アドラー心理学入門』(ベストセラーズ)という新書を読んで、衝撃を受けました。今、読者の皆さんが「目からウロコ」だと感じてくださるのと同じように、「こんな考え方があるのか!」と。

上阪 今回の共著者である岸見先生の書籍と出会ったのは、その時なんですね。でもそんな専門書を、偶然手に取るとは。もともと心理学や哲学に興味を持っていたんですか?

古賀 はい。20代の頃はよく読んでいました。だから、「フロイトやユングとは真逆のことを言っている、めちゃくちゃ面白い」と思いました。そこで岸見先生のその新書を何冊も買って、いろいろな編集者の方に渡して、「この内容をもっと面白く伝える書籍を出せないかな」と提案していたんです。ところが、誰一人として乗ってくれなくて。「何を言ってるのかよく分からない」、「こんなの売れないんじゃないの」みたいな反応ばかりだったんですよ。

上阪 そうだったんですか。2013年冬に『嫌われる勇気』が発売されるまでに14年ありますが、この間いったい何があったんでしょう?

古賀 僕は、どんなに見向きをされなくても、いつかこれを実現したいという思いをずっとあたためていました。ようやく「めちゃくちゃ面白いね!」と言ってくれる編集者が現れたのが、たまたま10年後だった。それが担当編集者の柿内芳文さんでした。

上阪 それで、岸見先生に会いに行かれたんですね。

古賀 ちょうどその頃、新聞社の企画でインタビューの仕事があって、そこでお会いしたのが最初です。その時に、「是非こういう本を一緒に作らせてください」という話をしたら、「喜んで」と快諾いただけました。それが、2010年です。

上阪 なるほど。10年越しでようやく出版に向けて動き出した、と。その後、出版までにさらに3年。通常、僕らが本のライティングをする時は、だいたい月に1冊のペースで書きますから、かなり時間をかけて作られていますよね。取材はどのくらい行われました?

古賀 1回4~5時間を10回くらいです。それをじっくり、2年ほどかけてやりました。「この本は、出版期日を決めて取り組む仕事じゃない。何年かけてでも、最高の内容のものができた時に出版しよう」と、最初から柿内さんと決めていたんです。その後、執筆には1年半かけていますね。僕はこの間、他の仕事はほとんどお断りして、この1冊に賭けていました。

上阪 それもすごいな。売れるかどうかもわからないのに、他の仕事は断ってしまった。ある種、ギャンブルですよね。どうしてそこまでできたんですか?