トライアスロンが変えた、元アイドルの生活

スポーツコミュニケーションズ, 白戸太朗

生活を変えたトライアスロン

そんな状態で大会の2週間前となった。スイムはまったく自信が持てない状態で何をしていてもその不安だけが彼女にのしかかる。「寝るときはもちろん、仕事しても、ご飯食べても、お酒飲んでもそのことが頭から離れなかった」という精神状態のまま大会期間を迎えることになった。しかし、相原は前日から不思議と落ち着いてきたという。頑張っているのは、不安に思っているのは自分だけでない。周りの参加者、仲間の存在が心強かったのである。

(スタート直後、カメラに笑顔を見せる余裕も)

そして大会当日、スタートしてしまうとあっけなくレースは終わった。課題のスイムは何度か苦しくなったが、問題なく泳ぎ切れた。ランも一度も歩くことなくフィニッシュを迎えることができた。彼女は「あれ、もう終わってしまうんだという感じ。その前が長かっただけにあっけなかったですね」と笑顔で語る。こうして相原勇はトライアスリートになったのだ。

「このスポーツに出会ったおかげで生活が変わったのが大きかったです。今までのだらだらとした生活から、ひとつ芯が通った感じ。何をしていてもどこかにトライアスロンがいる感じが心地いい」と言う。ハワイ生活で物足りなさを感じていたが、ようやく「目標」を見出せたようだ。

また「トライアスロンは舞台と同じ。沢山のものごとを締め切りまでにやりきらなければならない。だからこそ、プライオリティを見極め、順序立てて整理し、1つずつこなしていく。それに気が付くことで、多くのことをこなしていけるようになりました」と自分の経験が役立ったとも口にする。だからこそ、ほぼ1人で1年間の準備をこなすことができた。それでも最後は練習仲間の存在も大きかった。「練習のノウハウというより、練習の仕方みたいな基本的なところを勉強させてもらったし、一緒にやっているという連帯感も有難かった」。タフに見える彼女もプレッシャーと戦うには、仲間が必要だったのだろう。

レース翌日に会った時には、来年に向かって何をするのか、相原の頭の中ではもう膨らんでいることに驚かされた。フィニッシュ後、しばらくするとまだまだ不甲斐ない自分に物足りなさを感じ、次に向けてのモチベーションが沸いてきたという。コツコツと努力をし、喜びを獲得するという人生を歩んできた彼女には、このスポーツがピタッとハマったようだ。

「とりあえずトライアスロン」が「いつもトライアスロン」に。この業界に元気な女性がまた1人加わった。 

<白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール>
スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス) へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展 させていくための会社「株式会社アスロニア」を設立、代表取締役を務める。著本に『仕事ができる人はなぜトライアスロンに挑むのか!?』(マガジンハウ ス)、石田淳氏との共著『挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術』(清流出版)などがある。
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