数学の未解決問題は人工知能に任せるしかない!

『四色問題』が投じた巨大な問い
一松 信 プロフィール
〔PHOTO〕iStock

現在の数学では、単に可能か否かだけでなく、可能でもその手間がどれだけかかるかという「計算量の観点」が重要視されている。

平面地図の五色塗り分けは多項式量の手間でできる(P問題)のに対して、四色塗り分けはNP問題ではるかに手間がかかる、といった計算量的な話題は無視できなくなってきた。

そのため第六章以後は初版の記述を活かしつつ、かなり大幅に書き換えをした。特に初版の第七章「乱れ飛ぶ誤報」には誤りも多かったので、縮小して第六章に合併した。

残りの二章では、アッペル=ハーケンによる証明が本当に正しかったのかという点と、「計算機による数学の定理の証明」に関する意義に重点を置く記述にした。この時代の「捨て石」に終わった多くの小論文の追跡も一つの課題だが、それは今後の数学史研究をまちたい。

現在ではすでに証明されたのだから「四色定理」とよぶべきであろう。その研究も、計算機による「形式的証明」の重要な一例という形で続けられている。この方向の「計算機支援による数学研究」はそれ自身人工知能研究上の大問題であり、その一部の解説だけでも一巻の書物になり得る。

今回の新訂版では、最後の第八章でその方面の話題に若干触れただけだが、多くの進展が着実に進められているとだけ述べておこう。

現在ではこの例のように大規模なコンピュータ活用による証明を忌避する数学者は、皆無ではないにせよ減少している。ほかにも球の最密充填に関する「ケプラー予想」の解決など、そのような方法によらなければ証明できない課題がいくつもあることが、次第に広く認識されてきている。

四色問題はむしろ、そういった「意識転換」のきっかけになった難問として、語りつぐのが正しい位置づけかもしれない。

本書の改訂に当たって、講談社ブルーバックス編集部長小澤久氏ほか編集部の方々に終始お世話になった。またいくつかの文献の閲覧の便宜をはかって下さった京都大学数理解析研究所図書室の方々に厚く御礼を申し上げたい。

著者 一松 信(ひとつまつ・しん) 
一九二六年、東京に生まれる。東京大学理学部数学科卒。同大助教授、立教大学教授、京都大学教授、東京電機大学教授を経て、現在京都大学名誉教授。理博。専攻は数値解析。太平洋戦争末期の学徒動員で暗号解読に携わり、以降、計算機と整数論との関連で公開鍵暗号に深い関心をもつようになる。海外との交流をはじめ、数学の啓蒙活動にも熱心で、専門家向け、一般向けを問わず著訳書多数。二〇一五年、日本数学会出版賞受賞。
『四色問題 どう解かれ何をもたらしたのか』

一松信=著

発行年月日: 2016/05/20
ページ数: 276
シリーズ通巻番号: B1969

定価:本体  980円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)

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