ブーム再来の兆し 「K-1」を背負う格闘技界の新星が登場!~高校中退、タイでの修行…すべてを明かす

岡田 真理 プロフィール

夢は保育士、ところが退学

しかし、「空手道場に通い始めて、大変な目に遭ったんですよ」と武尊は苦笑する。指導者となった安井博美氏の指導方針は厳格で、幼い武尊にとってはとてつもなく恐ろしいものだった。

「組み手で、僕が唸るくらい先生が倒しにかかってくるんです。僕が倒れても上から容赦なく踏み潰してきて。僕、その時小2ですよ(笑)。踏まれながら、わんわん泣いてましたね。でも、僕は絶対『参った』って言わなかったんです。悔しかったから言いたくなくて。だから結局、いつもみんなからボコボコにされてました(笑)」

練習に行くときはいつも母が車で送ってくれたが、自分から空手を始めたいと言ったにもかかわらず、車中では毎回「行きたくない」と涙を流した。それでも、休むことなく週に3回必ず道場に顔を出していた。

中学生になると、武尊は髪を明るく染め、左耳にピアスの穴を開けた。スウェットの上下にサンダルを突っ掛け、小さな肩を大きく揺らしながら夜道を歩くようになった。

「田舎って不良がモテるんですよ。悪いことをすればカッコいい。だから、バンドとかカッコいいと思われることを全部やりました。実際、そこそこモテてたと思います(笑)。それでも空手だけは休まず続けました。髪を染めた時とピアスを開けた時は、安井先生にものすごく怒られましたけどね」

そんな中でも、進路のことは真剣に考えていた。中学3年の武尊にとって、アンディ・フグの立っていたリングも夢ではあったが、そのほかにもう一つ興味のある職業があった。

「昔から子供が好きで、小さい子と遊ぶのが大好きだったので、保育士になることも考えていたんです。中3の時点では、格闘技の世界に行くか保育士の道に進むかまだ決められなかったんで、ボクシング部があって保育士の資格もとれる高校に進学することにしました。ボクシングは、顔へのパンチがない空手だけをやってきた自分にとって必要な技術だったので」

しかし、中学時代からのやんちゃ癖をまだ封印していなかった武尊は、わずか3ヶ月で高校を退学になってしまう。K‐1ファイターと保育士、二つの夢が一気に閉ざされてしまった。塞ぎ込み、どんなにきつくても休まず続けてきた空手の練習も休むようになった。怒られるのが嫌だったのだ。

「でも、安井先生はわざわざ家まで来てくれたんです。怒らずに、親身になって僕と話をしてくれた。そのおかげで腐ることなく、なんとか前向きに頑張ろうと思えたんです」

こうなったら、もう格闘技で成功するしかない。漠然としていた未来が、はっきりと輪郭を成した。退学を機に進路を一本に絞った武尊は心機一転、キックボクシングジムにも通い始めた。

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