「起承転結」が通用するのは日本人だけ!算数のできない人に仕事を任せてはいけない

社会人のための教養講座
佐藤 優 プロフィール

「起承転結」の本当の意味

数学力と並んで、もうひとつ重要な論理の力である「文章力」についてもお話ししましょう。

歴史学者で筑波大学名誉教授の故・澤田昭夫さんが書いた『論文の書き方』は、長年にわたって読み継がれているロングセラーですが、その中に、こんな興味深い一節があります。それは「起承転結ではこまる」というものです。

「『起承転結』というのは、『書き出し→その続き→別のテーマ→もとのテーマ』という漢詩の構成法で、それを使って論文を書けば、何が幹線なのかよくわからないものが出来上ります。(中略)この論法で論文を書くと、序論『天皇制は問題である』→第二章『天皇制についてはいろいろの見方がある』→第三章『イギリスの王制はエグバートから始まる』→結論『天皇制はむずかしい』と、こんなふうになるでしょう」(『論文の書き方』より)

文章の作法を説いた本を読むと、しばしば「起承転結を考えて書け」とあります。しかし起承転結というのは、本来は漢詩を書くときに使うもので、論文やビジネス文書など、論理的な文章では絶対に使ってはいけないものなんです。それは先ほどの引用のとおり、起承転結で書くと、論理が破綻した文章になってしまうからです。

ただ実際には、これで会社の書類を書く人は少なくありません。私も経験がありますが、上司に提出する文書などでは、起承転結を盛り込んだほうが、相手が納得しやすいという現実がある。この感覚は、海外の人には理解してもらえません。「起承転結が通用するのは日本人だけ」と覚えておいてください。

「週刊現代」2016年5月7日・14日合併号より