社員30万人の最強企業トヨタで「偉くなる人」の共通点

部長・役員はどう選ばれるのか?
井上 久男 プロフィール

まずはミッドサイズのプレジデントに就く吉田守孝専務(58歳)。名古屋大学工学部機械科卒で'80年入社。「開発のエース」「トヨタでクルマ造りが最も分かっている男」などと呼ばれ、トヨタの最高級車『レクサス』のチーフエンジニアを務めた。トヨタ系列企業幹部が言う。

「バランス感覚が優れていてユーモアもあり、若い時から経営者の視点でモノをいうタイプだった。社内外の人望が厚く、名門私学、東海高校の同窓会長も務めている」

同カンパニーはカムリやクラウンなどの開発を担う本流中の本流で、絶対に負けられない闘いをエースに託したと言える。

次はコンパクトカーの宮内一公専務(59歳)。名古屋工業大学機械工学科を卒業して'80年に入社。吉田氏と同期で、役員就任も'09年と同じだが、畑は違って生産管理や調達など工場に近い部門の経験が豊富だ。

 

'80年入社は「豊作」と言われる中でも、「宮内さんは仕事に厳しいことで有名で、数値管理にも細かく『こんな数字どこから出てくるんだ』とミスを一喝することも。トラブルが起こると、自ら現場に出てきて対策を指示するタイプで、下請けからは恐れられる反面、尊敬を集める」(トヨタ関係者)。

コンパクトカーはトヨタにとって不採算部門で、厳しいコスト管理をしなければますます収益的には苦しくなる。そのため、「数字に厳しい宮内さんに白羽の矢が立った。さらに、今後はトヨタがダイハツを完全子会社化し、同社がこのカンパニーの傘下に入ると見られる。宮内氏はダイハツのリソースを有効活用する重責も担う」(前出・トヨタ関係者)。

異例の抜擢にはワケがある

「愛のある厳しさで指導してくれる人」との社内評があるのは、先進技術カンパニーの伊勢清貴専務(61歳)だ。同期の前出・吉田氏と並んで「開発のエース」と呼ばれ、モータースポーツ本部長などを務めた。

主に担当する燃料電池車や自動運転は、次世代の技術であり、他社・他業界との連携も必要になってくる分野。このため、「フットワークが軽くて視野も広い」と言われる伊勢氏が登板した形だ。

CVのプレジデントに就く増井敬二専務(61歳)は、京都大学法学部卒の'77年入社。調達部門の経験が長く、生産管理部長も務めた「現場派」だ。トヨタではよく、一流大学を出た事務屋に作業着を着せて現場に近いところで働かせるが、その頂点に立つ一人と言える。

「とにかくまじめな人で毎日でも生産現場に行きたいと思っている人。トヨタラグビー部の顧問をしており、プライドが高い選手をうまく操る操縦術にも長けている」(トヨタグループ幹部)

このCV部門は、グループの車体メーカーであるトヨタ車体と一体運営され、増井氏は同社社長も兼任する。グループとはいえ別会社だけに、持ち前の人柄で人心掌握が期待されているのだ。