「オバマの時代」とは一体なんだったのか? 「核兵器なき世界」構想がもたらした大いなる逆説

次期政権に受け継がれるリスク
佐藤 丙午 プロフィール

前述のように、これら措置のいくつかは政権の下で実施された反面、核実験の禁止を国際法的に担保するCTBTは未批准状態にあるなど、オバマ政権の下でも実施されていない措置もある。

これらを俯瞰して気が付くのは、オバマ政権の外交・安全保障政策における「核兵器なき世界」構想の重要な点は、政権前半期に不拡散と核セキュリティ問題を中心に重点的に政策措置が実現され、第二期以降の措置としては、イランの核問題に関する包括的共同作業計画(JCPOA:Joint Comprehensive Plan of Action)以外に目立った成果がない点である。

JCPOAの成立についても、米国内ではイランの将来の違反行為に対する抑止措置がないことと、中東の戦略環境の下で、米国はイランに対する政治手段を実質的に喪失することへの批判も根強い。

つまり、不拡散問題での成果が他の政策分野に悪影響を及ぼすという古典的な問題の発生が予想されるため、個別の政策措置を一つの政策分野で評価できないという問題から逃れられないのである。

これは、核軍縮でも顕著に見られる。米国が20世紀以降リベラル国際主義に基づいて国際秩序の構築を重ね、安全保障面でも米国の安全保障上の関与と再確証を前提に多国間及び二国間関係が構築されている中で、その前提となる核兵器の存在およびその意義を、ただ大統領個人の信念によって変更することが、米国の歴史や同盟国との信義の中で適当なのかという問題は、指摘され続けてきた。

もちろんオバマ大統領は、核抑止の意義を否定しないと繰り返し表明してきたし、それは現実の軍事態勢や、同盟国との核協議の中で証明されてきた。

そうなると、「核兵器なき世界」を長期目標として掲げることと、自国や同盟国等を核抑止で防衛するという戦略構想は両立しうるのか、という問いに行き着く。

そして、もし両立するのであれば、どのくらいの期間両立し、両立しない状況が到来した瞬間には何が起こるのか、という新たな問題にも直面する。