「オバマの時代」とは一体なんだったのか? 「核兵器なき世界」構想がもたらした大いなる逆説

次期政権に受け継がれるリスク
佐藤 丙午 プロフィール

不明確だった短・長期目標の因果関係

オバマ大統領は米国内および国際社会の潜在的な願望を理解し、それを踏まえた政治的な方向性を提示することに長け、その政治的アピールの実施に成功した。

確かに、「核兵器なき世界」演説に対しては、米国が核軍縮に向けた大目標を提示した点に国際社会の評価が集まった。実際には、米国はその世界を実現するための方策や優先順位、またタイムラインを明確に提示せず、核兵器の存在に安全保障を依存する各国の政治的状況への対応は、実務的作業の中で対応されるべきものとなったのである。

一般的に、政治目標の追求という意味で、長期目標と短期目標とが別個の論理で構成されるとき、歴史を紐解くと、カーター政権期の人権外交などのように、それが政治的混乱の発生原因となる例が数多く見られる。

オバマ大統領の「核兵器なき世界」構想の特徴は、構想が理想とする世界を実現するには、米国および既存の核兵器国と核兵器保有国(インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮)が核兵器を放棄するという重い決断を下す必要があるのに対し、政策の焦点分野として核セキュリティと核不拡散が提起されていた点にある。

構想における長期目標と短期目標の因果関係は明確ではなく、短期的措置を積み重ねた結果が長期目標の実現になるのか、長期目標を実現する過程で短期目標を実現することが不可欠なのか、それとも、長期目標と短期目標との間に相関関係がないのか――オバマ大統領の演説及びその後の行動や発言では明らかではない。

また、「核兵器なき世界」に向かうための必要な措置として、今後何が具体的に必要なのか、という問題も語られていない。

プラハ演説を振り返ってみると……

ここで、2009年4月の発言を振り返ってみよう。

オバマ大統領は、核実験の禁止と核の闇市場の根絶を挙げ、特に核不拡散の重要性を強調している。そして、必要な措置として、国家安全保障戦略における核兵器の役割の低減(戦略核弾頭と備蓄の削減に関するロシアとの交渉の開始)、NPTの強化(核軍縮と、平和的原子力エネルギー活用における拡散リスクの削減、罰則の強化)、そしてテロリストに対する核の拡散防止(核物質の安全管理)を主要なものと規定している。