「オバマの時代」とは一体なんだったのか? 「核兵器なき世界」構想がもたらした大いなる逆説

次期政権に受け継がれるリスク
佐藤 丙午 プロフィール

オバマ政権は安全保障政策における核兵器の役割の低減に関する問題を提起し、米国自身、2010年の核態勢見直し(Nuclear Posture Review: NPR)で具体的な方針を示している。

それによると、米国は核兵器の根本的な役割を自国、同盟国、パートナー国に対する核攻撃の抑止とし、それらの重要な国益を防衛するための極限の状況(extreme circumstances)で核兵器の使用を考慮する、としている。

さらに、非核手段による攻撃を抑止する際の核兵器の役割を、単一目的(sole purpose)に限定しないが、低減させることを表明している。ただし、NPTに加盟し、核不拡散の義務を遵守する非核兵器国に対しては、消極的安全保証を約束するとしている。

クリントン政権の時代にも課題となり、ブッシュ政権の下で核兵器の大幅削減を実現した、生物化学兵器に対する核兵器の報復的使用の禁止については、オバマ政権はブッシュ政権の運用政策の方針を継承し、一定の留保の下、通常兵器で破滅的な反撃を加えると表明している。

NPRでは、核兵器の役割低減に向けた具体的措置を表明している。たとえば、核実験を実施せず、CTBTの批准を追求すること、新核弾頭を開発しない、その代わり、核弾頭の安全性・確実性・効果性を確保するため、寿命延長プログラム(LEP)の実施などが表明されている。

NPRの内容は、2013年6月に発表された核運用政策(Nuclear Weapons Employment Strategy of the United States)で、戦略計画レベルに反映されることになった。

政権初期に表明した「核兵器なき世界」構想により、オバマ大統領は2009年にノーベル平和賞を受賞した。もちろん受賞には、ノーベル平和賞に付きまとう政治的思惑の存在を否定することはできない。

しかし、この受賞に関連して興味深かったのは、米国内のみならず、国際社会でも聞かれた批判――核廃絶に対して実質的な貢献を「まだ」行っておらず、願望を演説で表明しただけでノーベル平和賞を受賞した――である。

実はこれこそ、オバマ政権の外交・安全保障政策に対する交錯した評価の本質なのではないだろうか。