あなたの老親は大丈夫か?
急増する格安「無届け老人ホーム」の悲惨な実態

安さと引き換えに奪われるもの
長岡 美代

都内にある特養の施設長は、「最近は待機者数が減っている」とこぼす。

「数年前には約400人が待機していましたが、いまは半分以下になっています。特養だけでなく、民間の受け皿が増えたことも理由だと思います」

もともと厚労省が公表した全国に約52万人いるという待機者のなかには、「いまは必要ないが、将来のため」と早めに予約している例だけでなく、一人が複数施設に申し込んでいるものも含まれているので実態とは言い難い。施設によっては、待機者リストの70番目でようやく入居希望者にたどり着いた例もあるくらいなのだ。

老人ホームが少ない時代ならば国や自治体が特養を建設する意味もあるが、いまや有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も増え、入居者確保に苦労する事業者も出ている。

公と民の役割分担を進めるためにも、そろそろ特養を低所得者に限定するなど位置づけを見直すべきだろう。そうすれば無届け施設も減るにちがいない。

長岡 美代(ながおか・みよ)
介護・医療ジャーナリスト。一般企業で経営企画に携わったあと、介護現場を経て、高齢者の介護や老人ホーム、医療などの取材・執筆活動を続ける。介護保険が始まる前から追い続けている制度の動向も取材テーマの一つで、悪質事業者の実態にも詳しい。各種メディアで発言することも多い。著書に『親の退院までに必ず!コレだけ!!しなければならないこと』『親の入院・介護に直面したら読む本[新訂第2版]』『60代からの住み替えを考える本』、共著に『シングルライフの老い支度』『老後の真実』などがある。