あなたの老親は大丈夫か?
急増する格安「無届け老人ホーム」の悲惨な実態

安さと引き換えに奪われるもの
長岡 美代

安さと引き換えに奪われかねない命

インターネットで老人ホームを探す紹介サイトには、「経管栄養の必要な要介護者も受け付けます」「寝たきりもOK」などと謳う施設もあるが、一時金ゼロ、月額費用は食費込みで10万円を切るものも珍しくない。月6万円台の破格値をつけるところさえあるから驚きだ。

一般的に有料老人ホームは月15万~20万円程度かかるうえ、入居時に高額な一時金がかかる場合もあるのに、なぜこんなに安くできるのか。

既存の建物を活用して開設コストを押さえているのも理由だが、部屋にヘルパーを派遣すれば介護保険で稼げるからだ。

例えば、軽度の「要介護1」ならば最大で月約17万円、もっとも重い「要介護5」は月約36万円まで介護報酬を請求できる。利用者の負担は1~2割だが、事業者には全額が入るので、たとえ入居費を安くしても損をしないというわけだ。

「国は在宅介護を普及させようとしていますが、利用者が入院したり、施設に入居してしまうと途端にヘルパーの仕事がなくなるので事業としては不安定です。そもそも介護保険をめいっぱい使う家庭は極めて少ない。1ヵ所に高齢者を集めてヘルパーを派遣した方が継続的にサービスを提供できるので経営的にも安定する」(都内で訪問介護事業所を営む経営者)

たとえ部屋が狭かろうが相部屋だろうが、「安ければそれでいい」と考える家族もいるので両者の利益は一致する。

昨今は医療機関が運営する例も目立ち、介護のみならず在宅医療(訪問診療)も入居者に提供して、医療保険からも多額の診療報酬を得るところがある。病院からの退院患者の受け皿になっている例も見受けられるくらいだ。

ただ、安いなりのリスクがあることは知っておいた方がいい。

運営は事業者任せなので、入居者の心身状態に見合う職員態勢が整っていないこともある。介護・診療報酬欲しさに事業者から余計なサービスを押し付けられる可能性がある一方、手抜きや虐待が起こっていても発覚しづらい。たとえ自治体に訴えても、動いてもらえない場合もあるのだ。

昨年、入居者をベッドに縛りつけるなどの虐待が明るみに出た東京都北区のシニアマンションは、都がその存在を知りながら、「無届け」と認めなかったために虐待の発覚が遅れた。拙著『介護ビジネスの罠』(講談社現代新書)でもその顛末に触れているが、ここには北区が紹介した生活保護受給者も暮らしていたため、区も長年、〝知らぬふり〟をしていた。