今年夏の参院選から選挙年齢が20歳から18歳に引き下げられる予定だ。このため、財務省は、若い人に日本の財政について関心を持ってもらおうと、中高生の授業で使える教材を初めて作った。
資料は、財務省のサイトからダウンロードできる(http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/zaisei201604.pdf)。その内容は、これまでのパンフレットと同じであるが、相変わらずとんでもないことが書かれている。
筆者が問題と思うのは、次の3枚に集約できる。
9.国の歳出と税収の推移
<平成以降、歳出と税収の差が特に拡大し、借金が増加してきています。>
→いわゆる「ワニの口」が開いているという、いつもの財務省の話である。しかし、それを言うなら安倍政権になってから税収が増加しているため、「ワニの口」は閉じていることも指摘するべきだ。
10.急速に積み上がる国の借金
<毎年借金を続けた結果、国の借金は急速に積み上がっています。平成28年度末の国債増額は838兆円に達する見込みです。>
→国の借金だけを取り上げるのはフェアでない。バランスシートで負債だけではなく資産も見なければいけない。特に、国の関連会社も含めた連結バランスシートをみなければいけない。それをみれば、実質の国の借金は200兆円もないのである。
11.借金の国際比較
<日本の借金総額は、1年間の経済活動の規模(GDP)の2倍以上に足しており、主要先進国の中で最悪の水準です。>
→国や関係会社を含めた連結ベースでみれば、日本の財政状況は、先進国の中でも悪くない。
ここでは簡単な反論を書くにとどめるが、昨年12月28日付けの本コラム「「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか…なんと2016年、財政再建は実質完了してしまう! この国のバランスシートを徹底分析」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156)を読んでいれば思いつくだろう。
おかげさまで同コラムは、多くの人に読まれた。英訳もされ、海外でも読まれたようで、筆者のところに海外からの問い合わせが殺到もした。
逆にいえば、こうした簡単なことすらまだ理解されていないということだろう。特にマスコミでもこうした反論をいえる人はほとんどいない。マスコミは不勉強なので、財務省官僚のいうことをそのまま垂れ流すのが通例だ。
財務省官僚に反論するのは、骨が折れるだけだし、情報のすべてを官僚に依存するので、自分の「先生」にたてつこうとも考えない。マスコミは財務省の「ポチ」なのだ。