丸山ゴンザレス、メキシコ麻薬地帯に突撃! 激変するドラッグビジネスの最前線でいま何が?

『クレイジージャーニー』裏日記⑥
丸山 ゴンザレス プロフィール

ドラッグから読み解くトランプ発言の真意

麻薬カルテルが崇めている偶像

メキシコのドラッグ市場の規模はいかほどのものなのか。正確な規模は判明していないが、Ioan Grillo(ヨアン・グリロ)というジャーナリストによれば、マリファナに限って見れば20億ドルだという。

だが、ヨアン自身がこの推計に疑問をもっているように、あくまで卓上の試算なので、額面通りに受け取ることはできない。私は、もっと巨大な規模であると思っている。

というのも私は現地を取材して、麻薬ビジネスがメキシコの貧困層に深く根付いた産業であるという現実を目の当たりにしたからだ。

麻薬カルテルが生産しているドラッグは多岐に渡るが、主だったところではコカイン、クリスタルメス、マリファナである。特に最近の主流はクリスタルメスであろう。これは薬品を調合した合成麻薬の一種で、日本でも流通している覚せい剤に近いものである。

「メスはアメリカに送るし、マリファナも輸出するよ。ただ、マリファナの場合はメキシコ人も吸うけどね」

メキシコの麻薬事情に詳しく、カルテルについても詳しいメキシコ人医師はこのように指摘していた。もしアメリカでマリファナが合法化されたならば、メキシコから「輸入」される量は相当減少するだろう。麻薬カルテルが販売するマリファナの売上が落ちて、組織が弱体化すると予想する有識者もいるようだ。アメリカが合法化を急いだ背景にはこうした事情があったとまでいわれている。

また、メキシコの麻薬問題は、アメリカ国内の問題とも大きく関わっている。メキシコからの移民や不法移民は年々増加しているが、彼らが越境してくる理由のなかには、麻薬カルテルの活動によって国内の治安が悪化していることも挙げられている。そして、不法越境者たちが運び屋となり、多くの麻薬がアメリカに持ち込まれている、ということもある。

アメリカ大統領候補として過激な弁舌を振るっているドナルド・トランプが「メキシコとの国境に壁を作れ」と言ったのも、こうした不法移民を防ぎたいという民意を意識したものだった。

密輸といっても、メキシコからの場合はアメリカの国境を渡るときにだけ警戒すればいいので、他の国から運ぶよりは随分とリスクが少ない。そう考える越境者たちが次々とアメリカにドラッグを持ち込んでしまえば、米国内に“安定的に”ドラッグが供給されてしまうわけだ。トランプならずとも懸念するだろう。

しかし、供給を止めようにも、メキシコはカナダを含めた北米自由貿易協定に参加しているため、ドラッグ以外の物流の往来も盛んで、もはやドラッグをストップするためだけに壁を作ったり輸出入を制限するというのは、現実的には不可能といっていい。