2020年を待たずに、大学入試問題がどんどん変わり始めた! 現役高校生にも影響大の新たな傾向と対策

石川 一郎 プロフィール

アクティブ・ラーニングを見越した問題

早稲田大学スポーツ科学部の小論文は、<高等学校における「運動部の活動」の現状については、改革すべきである>という論題において、「賛成の立場」で、801字以上1000字以内で論述する問題が出題されました。

自分が賛成であれ、反対であれ、肯定側が否定側の人を説得することを目的として論述するのですが、この問題の画期的なところは、肯定側と否定側の両方を相対化し、客観的にそれぞれの立場を検証する「自分軸」の設定です。

「自分軸」とは、肯定側か否定側かに位置するのではなく、それを選択する「思考力や判断力」の基準に立つということです。その基準が、公平なのか偏っているのかが試されるのが今回の小論文問題で、単に論理的に書けていればよいという問題ではありません。

「自分」というのは、内面にこだわりの壁があるものです。それを「自分軸」だと錯覚している「自分」は、思春期のみならず、油断すれば常に現れます。その壁を取り払う意志を発動するとき、「自分軸」が現れます。

しかし、その取り払うべき「壁」に気づくのは、独り机に向かっていたり、本を読んだり、講義を一方的に聴いていたりするだけでは、なかなか難しいというのは、多くの人も経験済みでしょう。

いや、独り本を読んでいる時、あるいは講義を聞いている時、ハッと気づくことはよくあると思われるかもしれません。たしかに、気づく瞬間は、独りの時間だったりしますが、独りになる前に、すでに人間関係や仕事上の問題にぶつかり、それを乗り越えるには、まずは自分の中に取り払うべき壁があったのかと気づく瞬間がちょうどその独りの時間だったという場合が多いのです。

したがって、今回の早稲田大学のスポーツ科学部の小論文は、「思考力・判断力・表現力」のみならず、「主体性・多様性・協働性」という能力資質を養う体験をしてきたかまでも映しだす問題への挑戦だったと了解できます。

そして、この「思考力・判断力・表現力」と「主体性・多様性・協働性」を養うプログラムは、討論や議論も含むアクティブ・ラーニングという条件がなければ行えません。

次期学習指導要領の中心的なテーマである「アクティブ・ラーニング」が前提となる問題が、今後どんどん出題される予感がする小論文だったと思います。

結局、2020年大学入試問題は、アクティブ・ラーニングをホームベースとして「自分軸」をつくり、それを意識できるかにかかってきます。

「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」を問う様々な問いの中に、“Who are you ?”を問う問題が姿を変えて設定されることになるからです。

石川一郎 ( いしかわ・いちろう)  1962 年東京都出身、暁星学園に小学校4年生から9年間学び、85 年早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒。暁星国際学園、ロサンゼルスインターナショナルスクールなどで教鞭を取る。2006 年4月かえつ有明中高等学校教頭、15 年4月より今春まで、かえつ有明中・高等学校校長。「アクティブ・ラーニング」をかえつ有明中高で実践、2011 年に教師の研究組織「21 世紀の教育を考える会」を立ち上げ、幹事を務める。2月に2020年の大学入試改革で学び方をどう変えるべきかを明らかにする2020年の大学入試問題』(現代新書)を上梓した。