『8時だョ! 全員集合』は日本のお笑いをどう変えたか?

伝説の幕開けといかりや長介の苦悩
週刊現代 プロフィール

西条 旋風を巻き起こした一方で、ドリフは度々社会問題として騒がれて、日本PTA全国協議会で低俗番組だと問題視されたこともありましたね。

田村 居作さんがPTAに呼び出されたことがあった。当時まだ高かったスイカをギロチンにかけたのを、「食べ物を粗末にするのか」と批判された。

だけど、居作さんが「あなた方は相撲を見たことはないのか。相撲でどれほどの塩を撒くのか知っているか。それをもったいないとは思わないのか」と反論したら、何も言われなくなった。おっかない人だったけど、「俺たちは全力で面白いものを作ってるんだ、何が悪い」という矜持があった。

西条 それに、風当たりが強くてもあれだけのお化け番組だと局側もなかなか切れない。ただ、無敵と言われた『全員集合』も'80年代にはいってから徐々に視聴率を下げていきました。フジテレビの『オレたちひょうきん族』に押された格好です。

田村 『全員集合』はいつも生放送だから、僕たちは裏の『ひょうきん族』を見たこともなかった。ブラックデビル? なんだそれって。意識しようがなかったんです。

でも、後でフジのプロデューサーだった横澤彪さんに聞いたら、『ひょうきん族』のほうは『全員集合』の視聴率を分刻みで分析していた。

西条 ドリフの「作り上げる笑い」に対して、『ひょうきん族』はあえて「アドリブ重視の笑い」をぶつけた。悩んだいかりやさんが、最後の1年くらいは企画会議に出なくなったと聞きました。

松田 あのころのいかりやさんは、寂しそうだった。あれだけ身体を張って作り上げた番組だけに、視聴者離れはつらかったんだと思います。

田村 時折、代理店の人なんかと、「また『全員集合』みたいな仕事をやりたいね」と話すけれど、とても無理だよね。

西条 あんな予算はもうかけられないし、居作さんのような豪快な作り手も、なにより、ドリフのような国民的コメディアンも、もう現れない。名実ともに伝説の番組です。(「週刊現代」2016年5月7日・14日合併号より)

8時だョ!全員集合/'69年開始。TBS系列で毎週土曜日の午後8時から放送された生放送コント番組。ザ・ドリフターズによるコントが中心の前半部分と、ゲストも参加する合唱団などのミニコントからなる後半の二部構成。'85年に放送終了。全803回で平均視聴率は27.3%を記録した。
たむら・たかし/'41年茨城県生まれ。放送作家。大学在学中から青島幸男に師事。『全員集合』以外にも『ドリフ大爆笑』などドリフ関係の番組の多くを手掛けた
まつだ・ひろし/'61年生まれ。コメディアン。芸人を志し、飛び込みでドリフ付き人に。コントび~ランチとして活動の傍ら、ラーメン『高木や』を経営
さいじょう・のぼる/'64年生まれ。演芸評論家、江戸川大学准教授。古今東西の笑いに精通し、著書多数。いかりやの自伝『だめだこりゃ』では構成を担当した