五輪エンブレム、なぜA案しかありえなかったのか?

大騒動を通じた2つの学び
河尻 亨一 プロフィール

A案しかありえなかった

まず決定案に関して、読者はどのような感想をお持ちだろう?

最終候補作として、A~Dの4案がエンブレム委員会より世間に公表された後、各メディアによる人気投票なども行われたが、決定案は必ずしもそこで一番の評価を得たものではなかったようだ。

では、なぜ、エンブレム委員会はA案(組市松紋)を選んだのだろう? 最終投票の1回目で、これが過半数を超える13票(21票中)を獲得したことは判明している。

しかし、各委員がどのアイデアに投票したか? それはなぜなのか? 審査における議論の内容が現段階でオープンになっていない。そこがなんとなくモヤモヤする原因にもなっているのだが、わからないなら審査員になったつもりで想像してみるしかないだろう。

個人的見解であるが、アイデアの秀逸さとデザイン性の2点から、あの4案の中ではA案(組市松紋)しかありえない。これは私だけの考えではなく、デザイン業界中心に多くの人がコメントしていることではあるが、完成度や表現の深度の点でA案はB~D案より高いという印象を私も受けた。

これはあくまでA案との比較の話であり、B~D案が悪いデザインだと言っているわけではない。公開された制作者のプロフィールを見ると、B~D案に関してもデザイナー、アートディレクターとして仕事をされている方々とのことである。