佐藤優と学ぶ、目からウロコの「論理学入門」

社会人のための教養講座
佐藤 優 プロフィール

国会でも平気で「屁理屈」

さて、論理学には「トートロジー(同語反復)」という理屈があります。例えば、天気予報士が「明日の天気は、晴れか晴れ以外のいずれかです」と言えば100%当たりますが、明日の天気のことは何も分からない。そういう類の言説のことです。

このトートロジーは、欧米では「公共の場で使ってはいけない論理」であるとされています。社会人がこれを口にすると、「お前、いったい何を言っているんだ?」ということになるわけです。

しかし、かつて小泉純一郎元総理は、イラクに自衛隊を派遣するにあたり、野党から「自衛隊が派遣される『非戦闘地域』の定義を説明しろ」と追及されてこう言いました。

「自衛隊が派遣されている地域が非戦闘地域だ」

これを受けて、野党が「ならば自衛隊はどこに派遣されるのか」と聞くと、さらに小泉氏は、

「それは、非戦闘地域だ」

と答えた。どこまでいっても堂々巡りです。

小泉氏の強さは、このトートロジーを使いこなす点にありました。同じことを繰り返すだけなので、絶対に論理が崩れない。しかも、意味のある説明は一切しなくて済む。

問題は、トートロジーが国会でも平気で使われる日本の風土です。欧米なら一発退場のはずが、そうならない。日本人の興味深い側面です。

「週刊現代」2016年4月30日号より