大鶴義丹が選ぶ「人生最高の10冊」
〜不器用な人生を10代から振り返る

高校退学、精神的にも孤絶…

解決しないのが人生じゃないか

大学は日大芸術学部に入り、22歳くらいの頃に出合ってどっぷりハマったのが、ビートニクです。最初は「カッコいいやつらがいるな」と、ファッション的な感じでしたが(笑)。

ビートニクは'50年代後半から'60年代にかけ、アメリカで若者やヒッピーに熱烈な支持を受けた作家のグループです。放浪やスピリチュアルなど、サイケデリック・カルチャーのエッセンスも感じられ、惹かれましたね。

ジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグなど中心的な作家の作品はすべて揃えて読みました。中でもウィリアム・バロウズの『裸のランチ』は何度開いたかわからない一冊。そして何度読んでも途中でわけがわからなくなる本です(笑)。

でもこれは、わからなくていい本だと思う。たとえば売春宿を書いた部分で、フランスでもタイでもなく「近東の売春宿」という言葉を選んだりする、独特の飛躍に驚かされます。

バロウズがその時、脳の中にあるすべてを極限まで集中して書きなぐった作品なんだと考えています。今でも『裸のランチ』を何気なく開く習慣がありますね。

ビートニクにどっぷりはまった影響か、仲間とバックパック旅行もするようになりました。アジアを巡り、一泊80円ぐらいの安宿に泊まったり。10位の『ビーチ』はその頃、バックパッカーたちのバイブルでした。

遠藤周作先生の『深い河』は、30代になってから読んだ本。実はそれまで、熱心なキリスト教信者で硬そうな遠藤先生のイメージから、なんとなく敬遠していました。ところがこの本は信仰の揺らぎがテーマだと聞き、興味が湧いたんです。

インドのガンジス川へのツアー旅行を主軸に、バックパッカーにも関連している作品でのめり込みました。ほぼ一晩で一気読みしながら、素晴らしい作品と感じていたところ、ラストが急転直下、バチンと終わるんです。

でも、こういう終わり方なのが、人生なのかなと納得しました。揺らいで迷って、でも何の解決もつかない。それこそが人間であると。この作品に納得できて以降は、今の時代の、現実の生を描く作品やドキュメンタリーに、どんどん興味が湧いてきています。

今、ここまでネット全盛になって、本はネットで読める内容を超えなくちゃ手に取られることはありません。僕も発信する側として、表現することの意義を改めて考えています。(構成/佐藤太志)

▼最近読んだ一冊

おおつる・ぎたん/'68年、東京都生まれ。俳優にとどまらず作家や映画監督としても活躍。小説『スプラッシュ』がすばる文学賞受賞。6月18日~27日新宿・花園神社にて公演の「新二都物語」に出演