高知のダメ支店を「日本一」に変えた、キリンビール営業マンの奇跡

「高知が、いちばん。」誕生秘話
田村 潤

営業と広告のシナジー効果

ブランド広告というのは本社マターです。しかし、エリアにいる自分たちが自ら限界を決めるのではなく、「なんとかしたい」「勝ちたい」という主体性と工夫があれば、エリアコミュニケーション活動は否定されるものではないと思っていました。

そして地元で展開する広告は、「キリンは地元の皆様をいちばん大事にします」ということにテーマを絞り、そのことが高知の方に明確に伝わるメッセージにするべきだということは、失敗から得られた教訓でした。

しかし、このとき、もっと大切なことを発見しました。それは地道な営業の基本活動とエリア広告のシナジー効果です。

広告は注目されても、購買に結びつかないということはままあります。とくに「高知が、いちばん。」は、商品の説明にもなっていなければ購買意欲を刺激する言葉もない。しかし、市場から反応が徐々に上がってきました。

それは営業マンの愚直で徹底した活動が基礎にあったからです。よく回り、その結果どこにでもキリンビールが置かれていて、高知の人々が「キリンをまた飲んでみるか」と思ったときにそこに商品があったからこそ、数字に結びつくことが可能になった。

またこの広告の流れている時期、営業も今までより、料飲店、量販店ともに飛び込みやすくなり、さらに回りやすくなっていきました。良い循環が生まれたのです。

広告制作作業に関しては、外を回っている営業マンの時間を使いたくなかったので、ルーティーンをもたない自分や手を挙げた女性社員の仕事としていました。そのため、経緯がわからなかった若手の営業マンたちは最初「高知がいちばん、って何?」という状態だったようです。

「高知が、いちばん。」というコピーには、ラガーを飲んでいただいている感謝、ラガーを飲んでいただく自信、ラガーが皆様に愛されているという自信をこめているんだよ、と先輩が若手に教えていました。

これがきっかけで見ず知らずのお客様と会話が始まることが増えてきました。「高知が、いちばん。」って何? と。高知の人は会話が続きだすと、急に親しさが生まれてきます。

反響が出てきてからは「高知 イズ ナンバーワン」というTシャツやのぼりまでつくり、バカにされることもありましたが、それだけ話題にもなりました。今までは一方通行だった高知の人々とつながりができてきた、と感じられたことは、わたしにとってだけでなく、営業マン、そして内勤の女性社員にも大きな活力源になっていったのです。

ビールは情報で飲まれていると述べましたが、もしかしたら一県一支店でその情報をコントロールすることができるのかもしれないと、ほんのわずかなひと筋の灯りを見ることができたのです。