松山英樹&スピース 2016マスターズ「魔の刻」に何が起きたか

2人の若武者を襲った悲劇の真相
週刊現代 プロフィール

「スピースについては、史上最年少でのマスターズ連覇という記録がかかっていたし、松山にしても日本男子初のメジャー制覇という悲願がありました。彼らの身に、経験したことのないプレッシャーがかかっていたのではないでしょうか」

尋常ならざるプレッシャーに晒されたとき、人の身体には何が起きるのか。スポーツ心理学者で追手門学院大客員教授の児玉光雄氏が解説する。

「過剰なプレッシャーを脳が感じると、それを自分で意識しているいないにかかわらず、脳が少しマヒしてしまう。それにより、筋肉が硬直してしまうのがイップス。私は、12番のスピースは一過性のイップスにかかっていたと見ていますし、松山選手も身体が思うように動いていなかった」

逃げれば必ず負ける

'86年のマスターズに出場、最終日に優勝争いを演じた中嶋常幸は、「オーガスタに棲む魔女を見た」と、後日のインタビューで、マスターズ独特の雰囲気についてこう語っている。

「マスターズは毎年、似たようなところにカップを切るため、選手だけでなく観客も含めた会場全体が、過去のショットをイメージしてしまう。『何年前は、ニクラウスがこのホールでバーディを奪って勝った』とかね。これが『魔女』だと思う。その中で、どう攻めるのかを考えるんだけど、大切なのは、逃げないこと。観客は劇的な展開を期待しているから、逃げたら熱が冷めてしまうから」

前出の児玉氏は、極限状況下でも普段どおりの力を発揮するためには、プレッシャーを感じないようにするのではなく、プレッシャーに立ち向かうことが大切だという。

「プレッシャーから逃げても、脳は感じ取ります。普段から、プレッシャーを意識的に感じつつ、自分のエネルギーにすることが、プレッシャーを克服する唯一の方法です」

そういった意味で今大会の松山は、「最終組のひとつ前で一日、優勝争いの緊張感を味わうという貴重な経験を積めた」(前出・伊澤プロ)

では、松山は悲願を達成するためにいかなる鍛錬をすべきなのか。