松山英樹&スピース 2016マスターズ「魔の刻」に何が起きたか

2人の若武者を襲った悲劇の真相
週刊現代 プロフィール

アーメンコーナーの『入り口』は、500ヤードを超えるオーガスタでも最長のパー4。ここのティショットで、スピースが持ったのはドライバー。

「今大会、ドライバーに不安を抱えていたスピースですが、10番のティショットのミスを引きずっているようでした」(現地取材した在米ゴルフジャーナリストの舩越園子氏)

普段、プレー中はほとんど表情を変えないスピースだが、このときは、いらついたような、困ったような表情を見せていた。案の定、このティショットもミス。10番、11番と連続ボギーを叩いてしまった。この時の心境を、スピース自身はこう振り返る。

「いま思えば、2つ落としたけど、まだリードはあった。12番のティグラウンドで一回ディープブレス(深呼吸)をするべきだったんだ。そうすれば結果は変わっていたかもしれない。でも、実際はそれすらできなかった」

スピースは、集中力を完全に失っていた。

2度目の池ポチャ

12番、ショートホールのピンポジションは、今年も右だった。ホールを左手前から右奥へ向かって横切る小川に最も近い、最終日恒例の難しい位置だ。'01年のマスターズで、日本人最高となる4位タイの成績を残した伊澤利光プロが言う。

「タイガー・ウッズも、ジャック・ニクラウスも、12番ホールについて『最終日の右のピンは、絶対に直接狙ったらダメだ』と言っています。12番は、グリーンが林に囲まれているため、小川の上を抜ける風とグリーン上、さらにはティグラウンドとも風向きが変わる。競り合っていて絶対にバーディをほしいという状況でもなかったですし、あそこはグリーンセンターを狙えばよかった」

12番ホールの3打目、スピースは素人のようにダフった〔PHOTO〕gettyimages

ところが、「オーガスタの魔女」に魅入られたように、スピースはフェードボールでグリーン右サイドを狙う。リズムさえも失ったスイングは、早打ちになり、スライス回転がかかりすぎたボールはグリーン手前の斜面を転がり落ちて、小川へと消えた。

「その後は、何をすべきか分からなくなった。ダウンスロープ(下り坂)から打つのがイヤで、(後ろに戻り)残り80ヤードの地点から打ったけど、今度はダフってしまった。何が起きたのか、分からない」