坂口恭平の熊本脱出記(4)3歳の息子は僕の手を引っ張り、「あそぼ」と言った

命より大事なものはない
坂口 恭平 プロフィール

すると夕食後、フーが僕にこういった。

「恭平、今度、モバイルハウスを一緒に建てて、そこに一緒に住もうよ!」

熊本に僕が建てたモバイルハウスは、今回の地震でもびくともしなかったのである。土地に定着しない、所有しない。こういった根源的な問題を僕はずっと言い続けたが、この熊本地震はそれを徹底して考えるときがきたのだと僕に思わせた。それは熊本県も感じてくれていると思う。

僕がつくったモバイルハウス。車輪が付いているから、どこにでも行ける。これは3万円でできた。

また僕は家族とともにどこかへ漂流していくのだろう。大変だろうが、それでも笑ってすごしたい。何よりも身軽でいい。

いま、この原稿を書きながら、家族の笑い声が聞こえる。とにかく安全な場所へ。その人間の根源的な行動原理は、いまでは、珍しい人、ということになってしまっている。本当にそれでいいのか。僕はそう思わない。

人間は気づかなくてはいけない。

そのときが来たのだ。

2016年4月18日 横浜市日限山にて

2016年4月17日21:09のツイート
坂口 恭平(さかぐち きょうへい)
1978年、熊本県生まれ。建築家、作家、芸術家、音楽家。2004年、路上生活者の住居を収めた写真集『0円ハウス』を刊行。『ゼロから始める都市型狩 猟採取生活』などで0円で生活する術をしめす。2011年、震災をきっかけに新政府を樹立し、『独立国家のつくりかた』を発表。2014年、小説『幻年時 代』で第35回熊日出版文化賞受賞、小説『徘徊タクシー』が第27回三島由紀夫賞候補となる。近著に第57回熊日文学賞を受賞した『家族の哲学』がある。 ツイッターはこちら→https://twitter.com/zhtsss