森友哉「圧倒的打撃センス」を持つ男
~西武首脳陣の悩みは捕手をやらせるかどうか

二宮清純レポート
週刊現代 プロフィール

採用された新ルールの大枠は、こうだ。クロスプレーの際、キャッチャーは本塁前でランナーをブロックすることができなくなる。ボールを持たずに走路を塞ぐことも禁止だ。一方でランナーも、走路から外れた位置にいるキャッチャーへの体当たりは危険なプレーと見なされ、悪質な場合は守備妨害をとられる。

ホームベースは誰のものでもない。いわば公共物であり、そこへの走路は公道にあたる。ゆえに、キャッチャーが占拠しようとすれば、走者は力ずくで排除にかかる。米国風にいえばアンリトン・ルール(書かれざるルール)だ。それがベースボールに迫力と緊張をもたらしていた。

しかし、こうまで本塁上での事故が相次げば、アンリトン・ルールも効力を失う。高い年俸を払っている選手を病院送りにされて、黙っている経営者はいない。

表向きには選手を守るための秩序形成、本音は「高価な商品を傷つけるな!」である。

いささか前置きが長くなってしまった。今季からコリジョン・ルールが導入されるにあたり、最大の受益者になるのではないか、と思われたのが、この青年である。

森友哉、20歳。埼玉西武ライオンズに入団して3年目のキャッチャーである。

小柄(公称・170cm)な森にとって、接触プレーの禁止はプラス材料である。大柄な選手との衝突が減れば、ケガのリスクも低くなる。

ゼニのとれるスイング

キャンプ中にそのことを質すと、殊勝な面持ちで、こう答えた。

「確かにキャッチャー側から考えるとケガも防げるし、よかった部分が多いと思います。ただしブロックができなくなり、これは守る側にとっては不利。1点を争う場面ではタッチプレーがより重要になってくるでしょう」

そして、続けた。

「去年1年間、キャッチャーとしては試合に出ていなかったので、正直言って(キャッチャーとしての)感覚が戻るかどうか……。特にリード面が心配です。(オープン戦など)これからの実戦で、いろいろ試してみたいと思っています」

ところが、である。残念ながら実戦を通じてキャッチャーとしての森の評価が高まることはなかった。

監督の田邊徳雄から、こう告げられたのはオープン戦の最中だった。

「迷いなく打撃に専念してもらう」

ひらたくいえば、キミのバットには期待しているが、マスクを被るのはまだ早いね、ということである。

どこで使うか、どう使うか。選手を起用する権利は監督が握っている。森も受け入れざるを得なかった。

「打てないとチームに貢献できないですから……」